初めて出てくる文法を教えるときのポイントって何かありますか?
しっかり準備して説明しているつもりなんですが、あまり学習者からの反応が良くなくて…
クラスで初めて扱う文法を教えるときって、結構緊張しますよね。下調べや準備に気合いが入るという人も多いのではないでしょうか。
でも、そういうときに具体的にどんなことに気をつければいいか、日本語教師になったばかりの頃はなかなかイメージしにくいと思います。
そこで今回は、初出の文法を扱うときに「これだけは抑えておくべき!」というキーポイントを2つ紹介したいと思います。
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授業準備の段階での文法の調べ方、類似表現との違いの見分け方が知りたい方はこちら↓
中級以上のクラスで文法を教えるときのポイントはこちら↓
授業準備時間を劇的に短くするオススメ文型辞典はこちら↓
上の3つの記事もぜひ併せて読んでみてください。
1. 最初の例文を選ぶときのキーポイント
基本的な考え方
まず一つ目に気をつけるべきポイントは、
最初にどんな例文を見せるのか?
ということです。
もちろん教科書には例文が掲載されていますが、イマイチ分かりにくかったり、使いにくかったりすることも結構あります。
最初の例文を選ぶ時に、まず気をつけることは、
その文法の特徴がはっきり出る例を選ぶ
ことです。
例として、「AついでにB」という文法を教えるときを考えてみましょう。
①散歩のついでに、手紙を出してきた。
②大阪出張のついでに、たこ焼きを食べてきた。
この文法を初めて説明するとき、あなたならどちらの例文を使いますか?
「散歩のついでに…」の例は?
この「AついでにB」という文法の項目では、多くの教科書で①のような例文が見られます。
でも、実はこの①の例文は、(最初に扱うには)あまりいい例文ではありません。
それは、この文法でキーとなる
「Aが主となる行動で、そのタイミングでBもする」、つまり「A>B」
というポイントがあまり伝わらないからです。
この例文では、「散歩(=A)」と「手紙を出す(=B)」という行動の主要性、優位性の差があまり大きくないので、単なる並列(A+B)や、順序(A→B)と混同してしまう可能性があります。
「出張のついでに…」の例は?
反対に②の場合だと、「出張(=A)」と「たこ焼き(=B)なので、どちらが主行動かは一目瞭然ですね。
もちろん「たこ焼き」はこのレベルでは初出のことが多いので、写真を見せるなどして、集中が未習語彙に持って行かれないように注意は必要です。
①の例文は「ついでに」のところでよく目にしますが、初めて勉強する人の立場で考えると、文法の持つ特徴的なルールが見えにくい例文であることが分かると思います。
ここで説明しているのは、あくまで「最初に出す例文の選び方」です。
ここで扱う例文さえしっかり吟味すれば、そのあとは①のような特徴がやや薄い例文も提示しやすくなります。
- 最初の例文はその文法の特徴が最も明確に出ているものを選ぶ
- 教科書の例文を使うときは、文法の特徴をよく表しているか確認する
- 1つ目の例文の吟味をしっかり行えば、その後の説明や例文提示がやりやすくなる
いろいろな文法の特徴を手っ取り早く知りたい方はこちら↓
2. 場面設定が必要な場合のキーポイント
使用場面の設定について
場面シラバスの教科書であれば、最初から場面が設定されていて、学習者が使用場面を理解してから文法を説明するので、あまり場面設定に気を遣う必要はありません。
でも、文型シラバスの場合、教師が予め場面設定をして文法を導入する形が主流です。
先日のアンケート(日本語教師のお仕事第調査!)の結果からも分かる通り、まだ文型シラバスの教科書を使用している日本語学校はかなり多いです。
導入や場面設定に悩んでいる人も多いと思うので、気をつけるべきポイントをまとめておきたいと思います。
基本的な考え方
最初の例文を選ぶ時にまず気をつけることは、
最も典型的な使用場面が明確にイメージできる例を選ぶこと
使用場面までの道のりと前提をはっきりと示すこと
です。
例として、「もし…(た)ら、…」という文法を初めて教えるときを考えてみましょう。
「(もし)明日雨が降ったら、(遊びに)行きません」という文で説明すると考えてください。
あなたなら、どの絵を使いますか?
考えてみてください。
前提とプロセスの示し方
あくまで私の個人的な考え方ですが、ここではまず②の絵を使って明日の天気の説明をするのが◎です。
明日の天気です。晴れです。いい天気です
とかそんな感じです。
次に使う絵がポイントなのですが、どれを使うか分かりましたか?
答えは④です。
明日の雨です。20%です。雨は降りますか?
たぶん降りません
ここで重要なのは、さっきの②の絵と、この④の絵の中にある「(降水確率)20%」を見せることによって、
明日は多分雨は降らないんだ…
と相手に明確に意識させることです。
こうすることによって、「もし…(た)ら」が仮定の表現であることが伝わりやすくなります。
そうですね。多分雨は降りません。
でも、もし、雨が降ります。遊びに行きません。
もし雨が降ったら、遊びに行きません
前提の提示に失敗したときに起こること
反対に、②④を見せずに、③の絵(降水確率80%)を見せると、学習者はどう感じるでしょうか。
「たぶん明日は雨が降るんだな」
と思いますよね。これだとその前提のもとに次の文を聞くことになるので、学習者の思考はこんな感じ↓になりかねません。
「たぶん明日は雨が降る」
↓
「雨が降っ(たら)行きません」
↓
「雨が降る+行きません」
↓
「雨が降る【から】行きません?」
「多分雨が降る」という前提のもとで、「雨が降った【ら】行きません」というのを聞くと、
「雨が降る【 ? 】行きません」→「【 ? 】は原因・理由」というプロセスを踏んでしまうのが自然です。
ここから「仮定」を入れ直さないといけないので、時間もかかるし、学習者も前提・予測が崩れ混乱しやすくなってしまいます。
このように、扱う項目の前にどのような場面設定・前提の構築が行われるかによって、学習者の思考プロセスは大きく変わります。
これが場面設定の重要性です。
- 場面が設定されていない教科書(文型シラバスなど)の場合、教師による場面設定が必要
- 最も典型的な使用場面が明確にイメージできる例を選ぶ
- 文を示す前に、どんな前提が必要かをイメージする
- こちらが構築した思考プロセスに学習者を呼び込み、文型をスムーズに理解できる準備をする
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いかがでしたか。
学習者が初めて出会う文法をスムーズに理解し、自分のものにするために大切なポイントをイメージしてもらえたでしょうか。
もちろん他にもたくさんのやり方はあるのですが、この記事に書いたことはどのレベルでも、どのタイプの教科書で教える場合でも役に立つ基本的な考え方だと思いますので、ぜひぜひ活用してもらえれば嬉しいです。
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