授業中にやる気のない学習者がいて、どうやって授業をすればいいのか悩んでいます…
日本語学校の学習者は、自ら望んで日本に来ている人ばかりではありません。
✔️自国で進路を探したけどうまくいかず逃れてきた人
✔️親に言われてなんとなく留学した人
✔️バイトして国に仕送りをするために来日した人
などはそもそも入学時点から学習意欲が低めです。
でもそのような人がクラスにいると、なかなかスムーズに授業が進みませんよね。
もちろん「授業が面白い」「説明がわかりやすい」と思ってもらえればそれが1番効果的なのですが、誰でも簡単にできるわけではありません。
そこで今回は、学習者にやる気を出してもらう(きっかけを作る)ために簡単にできる工夫を紹介します。
以前のこちらのツイートの解説です。
・やる気を引き出すことで、授業のスムーズな流れが作れる!
・学習者との距離感を縮め、活発な授業が展開できる!
・やる気のない学習者と、そうでない学習者への対応の違いが分かる!
1. 説明はごちゃごちゃ喋らない
もちろん普通の学習者にも通じますが、やる気のない学習者が以下のような教師の授業についていこうとすることは稀です。
×説明が抽象的で、学習者が聞いたことのない言葉を多用する
×説明が下手なのに、理解できていないことを学習者のせいにする
そうならないようにするためには、できるだけ説明は
✔️短く
✔️簡潔に
✔️学習者に理解しやすい語彙で
行うことを意識してみてください。簡単にこれが実践できるコツをいくつか紹介します。
○手の込んだ小芝居は打たない
○学習者の普段の生活に身近な内容の場面や例文を意識する
○文法や語彙の「意味」は、初級の類似語彙や文法で言い換えるだけにする
○それ以外のポイントは、前後件の制限や共起語の特徴に絞って説明する
2. 練習や活動は何度も変化を
例えば20人の学習者がいるのに、1人ずつ当てて何かを言わせたり、時間を稼ぐために同じようなコーラス、単純な変換練習などを必要以上に繰り返したりしていませんか?
このような単調な練習が続くと、学習者のやる気を削いでしまいます。
ましてや最初からやる気のない学習者の場合、このような練習をダラダラとやられたら、授業に参加しようなんていう気持ちはまず起こりません。
単調でだらだら続く練習を避け、常に練習にレベル差や変化をつけることによって、学習者のモチベーションと集中力が維持しやすくなります。
やる気のない学習者は、意外とゲーム要素の強い練習には参加してくれたり、グループ活動では光るところがあったりと、練習の形を変えることでやる気が出てくることも結構あるので、色々な練習や活動の形式を試してみることが大切です。
○個人、ペア、グループ、全体など活動の単位に変化をつける
○単純な変換やコーラス、簡単な前後件作文、フリー会話作成など、練習のレベルに変化をつける
○ドリル形式、ゲーム形式、課題形式など、練習への取り組み方に変化をつける
3. 例文や動機付は「学習者」の生活・興味に近いものを
1のところでも若干述べましたが、学習者に身近ではない話題は興味を惹きにくいのが現実です。
例えば
若い学習者ばかりのクラスで、教師が盆栽をやっている話を持ち出して、それに関する例文で文法を説明し始めたら、学習者はどう思いますか?
若い学習者で盆栽を知っている人がまず少ない、そして興味がある人も少ないなかで、そのようなテーマの例文を使われても学習者は理解することも難しく、また例文の内容自体に興味もないのでやる気もなくなります(盆栽の批判ではない、念のため)。
例文や場面は、学習者の生活に身近なものを使うのが鉄則です。
大学や大学院進学を目指す留学生の場合、アルバイトや恋愛、居酒屋、食べ物、音楽、アニメなどの話は興味を持って聞いてくれることが多いです。
○自分の趣味や経験などを使うときは、学習者がそれに興味を持てるか?学習者に身近なものか?を考えてから使う
○学習者の年齢層、来日前の環境や国、来日動機などを把握して、それに関わるものをテーマに使うのも◎
4. 授業で信頼を得るまでは距離を詰めすぎない
僕の経験上(分かりやすさと授業のうまさで引き込む以外の方法で)、やる気のない学習者を机に向かわせるのに最も有効なのは、友達のように接して仲良くなることです。
いわゆる「教師らしい」真面目なタイプの先生の説教や指導は、こういうタイプの学習者にはなかなか響きません。
だからこそ、逆に教師という立場から少し離れて接してみると、意外と心を開いてくれて、それをきっかけに授業中の参加度が上がってくることもあります。
実は不真面目な学習者って、
若くて気さくな先生の授業は意外とよく聞いている
ということって結構あります。
それは年齢も近くて、接しやすいことが大きく影響していると思います。
もちろん、信頼を得る前に距離を詰めすぎると、逆効果になることもあるので、そこには注意しなければなりません。
距離を詰めるまえに1〜3の項目をしっかり実践し、ある程度の信頼を得ておくことが不可欠です。
○ただし信頼を得る前に距離を詰めると逆効果になる
○この記事の他の項目を実践してから距離を詰めてみる
○授業外で積極的にコミュニケーションを取ったり、授業中に私生活について積極的に質問したりするのが◎
5. ルールにこだわりすぎない
日本語学校にも校則や教室での決まりごとなどがありますが、やる気のない学習者が、ルールに厳しい先生についてくることはあまり多くない印象です。
帽子を被ったままとか、挨拶しないとか、ボールペンで書くとか… 正直勉強と関係ないしどうでもいいです。
また、勉強しないからといって授業後に面談をして勉強の大切さを説いたり、やる気がないことについて説教したりしても授業の参加度が高まることはまあほぼないです。
ルールや勉強の大切さを必死で伝えるより、少しでも参加したいと思えるような内容を盛り込んだり、答えやすい質問を当ててみたりしながら、徐々に参加度を上げていく方が遥かに有効です。
「やらないとダメでしょ!」という精神より、「やりたいとこだけ一緒にやろうよ」ぐらいの精神で接した方がこういう学習者はついてきてくれます。
○やる気がないことを説教しても効果低△
○「一緒にやってみない?」の精神で、参加する部分を少しずつ増やしていこう
6. 大きい声と笑顔と図々しさ
最後に大事なのは、声の大きさと「少しの」図々しさです。
小さい声で
「やってください…」といっても学習者にはなかなか響きません。
やるとしても嫌々やるだけです。
だから
「はい!やるよ!3番3番!」みたいな感じで、少し強引に授業の流れに巻き込んでいってみてください。
学習者が流れに乗るしかない状況を作ることによって、「しょうがないなあ、やるか」という気持ちになるように仕向けることができます。
ただし、これをやるにはいくつか注意が必要です。
1つは、ある程度信頼を得てからこの方法を使うこと。
信頼のない初対面に近い段階で強引さを見せると、学習者は反発してますますやる気をなくします。
もう1つは、用法・用量を守ること。
「少しの」と書いたのはそういう意味で、図々しさが度を過ぎたり頻度が高すぎたりすると、せっかく近づいてきた学習者が離れてしまいます。頻度を上げすぎない、あくまで学習者が興味を持ちやすいところや参加しやすいところから攻めていく、というのを意識してみてください。
まとめ
いかがでしたか。
日本語学校にもいろいろな学習者がいて、クラス授業だと特にコントロールが難しい場合もあると思います。
でもそういうやる気のない学習者が徐々にやる気を出してきて、隠していたポテンシャルを見せたり、著しく日本語能力が向上したりすると、とても嬉しいものです。
基本的に、やる気があってよくできる学習者は教師があまり上手くなくても自分で成長していきます。
でも、こういうやる気のない学習者が成長するかどうかは教師の腕にかかっている部分が大きいと思います。
だからこそ、やる気のない学習者をやる気にさせることって、教師の仕事の醍醐味の1つだと思うんですよね。
学習意欲の低い学習者の対応に困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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