【登録日本語教員】国家資格化で日本語教師はどうなる?最新情報を解説!

日本語教師の国家資格について解説

日本語教師が国家資格になるという話を聞きました。

どのような制度になり、いつから始まるのでしょうか。

また、現役日本語教師の場合はどうなるのでしょうか。

日本語教育の質の向上と日本語教師数の確保のためという名目で、日本語教師の国家資格が創設されます。資格の名称は「登録日本語教員」です。

以前は「公認日本語教師」と呼ばれていたり、やっぱりこの資格はなくなると言われたりするなど紆余曲折がありましたが、2023年2月にはこの国家資格の創設を含む新法案が閣議決定され、さらに2023年5月には「日本語教育機関認定法」が正式に可決・成立しました。

2024年4月から新制度が始まる予定です。

この記事では、これまでの日本語教師資格との取得プロセスの違いや、この資格を取得するメリット、現役日本語教師への経過措置(移行期間)などについて解説します。

こんな人にオススメ!

✔️登録日本語教員の制度について最新の情報が知りたい!
✔️現職日本語教師はどうなるのか知りたい!
✔️日本語教師になるのはいつがベストなのか知りたい!

1. 現行の日本語教師資格

登録日本語教員の資格制度について見る前に、まずは現行資格をおさらいしておきましょう。

とはいっても、実は現行制度では日本語教師になるための公的な資格というのはありません

オンラインで教えたり、プライベートレッスンをしたり、ボランティアで働いたりする場合は、「私は日本語教師です」と名乗って日本語を教え始めた日から、日本語教師になれます。

ただし、法務省告示校(法務省によって認定された日本語学校などの日本語教育機関、以下「告示校」)で働く為には以下の3つのうちいずれかの資格が必要です。

(1)4年制大学卒業+日本語教師養成講座(420時間)修了
(2)大学で日本語教育に関する教育課程を修了(主専攻を修了、または副専攻対象科目を26単位以上取得)
(3)日本語教育能力検定試験に合格

現行資格についてより詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

なお、告示校以外でも、採用の際に似たような条件が求められることもあります。

ただ、いずれにしても、大学等の高等教育機関で働く場合以外は、上記のどれか1つの条件を満たしていれば大体OKというのが現状です。

2. 国家資格化でプロセスはどう変わる?資格取得の条件は?

では、日本語教師が国家資格化されると、資格取得の方法や条件はどう変わるのでしょうか。

まず、現状でこの国家資格が必要になるのは、新たに文科省(文化庁)が審査する「認定日本語教育機関」で働きたい人の場合です。

今は日本語教育機関は基本的に法務省が管轄していて、先に述べた告示校の認定も法務省(出入国在留管理庁)が担当していますが、国家資格化に合わせて日本語教育機関の審査業務は基本的に法務省から文科省(文化庁)に移り、認定日本語教育機関は文科省(文化庁)が認定することになります。

日本語教育機関が審査を受けることは必須ではありませんが、留学生を受け入れるには、認定日本語教育機関になる必要があります。

そして認定日本語教育機関で働く日本語教師は、登録日本語教員でなければならない、という要件が規定されています。

つまり、国内の日本語学習者のうち最も多くの割合を占める留学生を受け入れている日本語学校等で働く人は、基本的にこの資格取得が必須ということになります。

ポイント

・登録日本語教員の資格が必要なのは、文化庁が認める「認定日本語教育機関」で働く場合のみ
・認定日本語教育機関で日本語教師として働く場合は、登録日本語教員の資格が必須

日本語教師が国家資格化されると、新たに「日本語教員試験」と呼ばれる筆記試験①(基礎試験)及び筆記試験②(応用試験)の2つの試験の合格と、実践研修と呼ばれる教育実習の修了という、3つの課題のクリアが必要になります。

(1)筆記試験①(基礎試験)… 日本語教育を行うために必要な基礎知識・技能を問う問題
(2)筆記試験②(応用試験)… 日本語教育に必要な知識や技能を使って問題解決や現場対応をする力を問う問題
(3)実践研修… 教育実習。実際に外国人相手に日本語の授業をする実習

現行資格では、試験に合格するだけでもOKだし(独学では結構ハードルが高いけど)、養成講座を修了するだけでも日本語教師として働けるのですが、この資格が創設されると、ゼロから日本語教師を目指す場合、資格取得のためのプロセスは現行のものより増えることになります。

なお、現行資格の(3)に、日本語教育能力検定試験というものがありますが、国家資格用の試験である「日本語教員試験」は新たに創設されることになっています。日本語教育能力検定試験は年1回の開催ですが、新たな試験は全国で複数回実施される可能性が高くなっています。

また、2023年度中に、全国5か所で3,000人程度を対象として、この試験の試行試験が行われることになっています。

ちなみに、文科省(文化庁)が新たに指定する日本語教師養成機関(今でいう大学の主専攻・副専攻、または日本語教師養成講座(420時間))の課程を修了すれば、筆記試験①は免除されます。

それと、現行制度では、資格が「日本語教師養成機関の課程の修了」だけの場合は、4大卒の学歴が必須になっていますが、この学歴条項は新制度では撤廃されて、国籍・母語・年齢等による制限もない予定なので、幅広い層がチャレンジできることになりそうです。

要件をクリアした人は、文部科学大臣の登録を受けることができ、登録証が交付されます

ただこの登録は無料ではなく、実費を勘案した政令で定める額の手数料(未定)がかかることになるようです。

また、日本語教員試験の受験や、実践研修(教育実習)についても、同様の内容が法律案に記載されています。

ポイント

・国家資格化されると、日本語教員試験のクリアと教育実習の修了が必要になる
・指定の日本語教師養成講座を修了すれば試験①(基礎試験)は免除される
・学歴条項は撤廃され、4大卒の資格は不要になる

3. 現役日本語教師や養成講座受講生への経過措置、移行期間は?

ここまでを読んで、

「え、待って。じゃあ現役教師も、この試験と実習を受けないと日本語教師として働けなくなるの?」

と思った方もいると思いますが、この制度には、現職の日本語教師や、日本語教師養成講座を受講中の人のための経過措置(移行期間)も用意されることになっています。

上述の通り、新制度が始まれば、認定日本語教育機関で日本語教師として働く為には、登録日本語教員の資格が必須となります。

ただし、2023年2月に行われた日本語教育小委員会では、現在の告示校で日本語教師として働く資格(現行資格)を持つ現職日本語教師は、一定期間はこの資格を取らなくても認定日本語教育機関で働くことが認められ、その期間は5年程度を想定するという報告がなされています。また、この5年の移行期間の間であれば、現役の人は正規ルートとは違う形で、登録日本語教員の資格が取得できることになっています。

経過措置についてはルートが多数あり複雑なため、文化庁が出している図を引用して説明します。

こちらの図をご覧ください。

文化庁HPより

図には登録日本語教員になるための6つのルートが示されています。

AとBは登録日本語教員の資格取得のための正規ルート(ゼロから目指す場合)です。

Bは先に述べたとおり、新たに指定される日本語教師養成機関の課程を修了した場合のルートで、試験①が免除されます。

現役日本語教師や、日本語教師養成講座を受講中の人等の経過措置対象者は、C~Fのいずれかのルートを通ることになります。

順に見ていきましょう。

C(パターン1)… 現状認可されている「必須50項目」に対応済の大学主専攻・副専攻や、日本語教師養成講座を修了した人
→筆記試験①のみ免除

図内Bの「指定日本語教師養成機関」は、新制度開始後に新たに認定されることになりますが、経過措置期間中は現状認可されている機関を修了した場合でも、Bのルートと同様に試験①の免除を受けることができます。

ただし、Cのルートを通れるのは、文化庁が2018年(平成30年)に発表した「日本語教員養成において必要とされる教育内容」の必須の50項目に対応している現行課程の修了者に限られる(古い養成講座は対象外)点に注意が必要です。

C(パターン2)… 現状認可されている「必須50項目」に対応済の大学主専攻・副専攻や、日本語教師養成講座を修了した現職日本語教師(法務省告示校で働く日本語教師を想定)
→筆記試験①及び実践研修(教育実習)が免除

法務省告示校など、質が担保された日本語教育機関で働く現職日本語教師は、経過措置期間中にこの国家資格を取得する場合、実践研修(教育実習)が免除されますが、試験①と試験②については受験する必要があります。

ただし、現職日本語教師のうち、Cの条件を満たす人は、筆記試験①も免除されます。図がややこしいですが、Dの「現職日本語教師」のところから始まって、Cの「指定養成機関と同等と認められる現行課程修了」と「筆記試験①免除」を通って、筆記試験②からはDと同ルートになります。

D… 必須の50項目対応前の養成課程を修了した現職日本語教師、民間試験合格なし
→教育実習は免除、筆記試験①は講習の受講及び講習修了認定試験の合格をもって免除

Dは、現職日本語教師のうち、必須の50項目に対応前の養成課程を修了している場合で、筆記試験①の免除を受けるには、講習の受講と講習修了認定試験の合格が必要です。

筆記試験②(応用試験)は必須となります。

E… 現職日本語教師で、一定の要件を満たす民間試験に合格済み
→教育実習及び筆記試験②は免除、筆記試験①は講習の受講及び講習修了認定試験の合格をもって免除

この民間試験というのは、恐らく先に述べた必須の50項目、または2000年(平成12年)の「日本語教員養成において必要とされる教育内容」を踏まえたあとの日本語教育能力検定試験になると思いますが、この試験に合格している現職日本語教師は、講習を修了し、講習修了認定試験に合格することで試験①も免除され、実質的にすべてのフローが免除されます。

F… 現職日本語教師で、C~Eに該当しない人
→教育実習のみ免除

現職日本語教師で、C~Eの要件を満たさない人は、実践研修(教育実習)は免除になりますが、2つの日本語教員試験は受験が必要になります。

ただ、一つ注意しておいてほしいのは、今後「現職日本語教師」や「民間試験」等々の解釈・定義が変わる可能性もあるということです。

今現役の日本語教師として働いている人や、現行の文化庁認可の日本語教師養成講座等に通っている人は、今後の動向を注視しておく必要があると思います(このブログでも、変更があれば内容を更新します)。

4. 登録日本語教員になるメリットは?給料は上がる?

先に述べたとおり、国内の認定日本語教育機関で日本語教師として働きたい人は、いずれこの登録日本語教員の国家資格が必須になるので、メリットがあってもなくてもこの資格を取得しなければなりません。

では認定日本語教育機関で働けること以外にメリットがあるのかというと、それは正直微妙なところです。

強いて言うなら、この登録日本語教員は国家資格となるため、従来の日本語教師よりも資格の専門性等が認められやすくなり、その結果として社会的地位が向上したり、認知度が上がったりすることが挙げられるでしょう。

ただ、今のところ、それによって日本語教師の待遇(給料)が大きく改善する未来は(僕には)見えません

日本語教師になるためのハードルが上がるだけで、現行資格との差別化が図れるかどうかと言えば、疑問が残ります。

制度が始まり、登録日本語教員の認知度が上がれば、認定日本語教育機関以外でもこの資格を持つ人が求められたり、従来の日本語教師資格を持つ人と給料等の面で差別化が図られたりする可能性もあります。

ただ、下のツイートでも述べたように、この制度によって日本語教師になる人が減ってしまい、現役日本語教師は給料が上がらないのに、更なる負担を強いられる結果になってしまうのではないかとも思います。

そうならないように、私たち現役日本語教師は、積極的に現場の声を伝えていくことが大切です。

いずれにしても、国内の日本語学校等で日本語教師になりたいのであれば、この資格にはチャレンジする必要が出てくるでしょう。

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5. いつ日本語教師になるのがベスト?

この資格制度が始まってから日本語教師になった方がいいのか、始まる前にハードルの低い現行資格で日本語教師になった方がいいのか、ということですが、先に述べた経過措置も用意されるので、結論としては「どちらでもいい」と思います。

制度開始後に日本語教師を目指す場合は、どのルートでも試験②の受験は必須になるし、養成講座内か単独かの違いはあれど、実践研修(教育実習)の受講も必須になります。

日本語教育能力検定試験がベースになるのであれば、独学で2つの新試験に合格するのはかなり難易度が高いでしょう。

一方で、開始前に急いで現行資格を取得した場合は、「民間試験」や「現職日本語教師」の基準が曖昧なため、最悪の場合、取得後に再度試験を受け直す必要が出てきたり、キャリアが「現職」として認められなかったりする可能性もあります(個人的にはこちらの可能性は低めだと思いますが)。

どちらも複数のデメリットが想定されます。

そのため、文科省(文化庁)や法務省(入管)等の動向をチェックしながら、「なりたいときになる」のがベストだと個人的には思います。

資格取得時期によって給料が大きく変わるということも想定しにくいです。

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まとめ

いかがでしたか。

2024年4月から開始される予定の日本語教師の国家資格「登録日本語教員」や、「日本語教員試験」について、2023年5月現在の最新情報を解説しました。

日本語教師を目指す人や、現役日本語教師の皆さまの参考になれば幸いです。

このブログでは、今後もこの制度の創設に係る政府の動きを追っていきます

更新があれば随時Twitterでお知らせしていくので、まだの人はフォローしておいてもらえると嬉しいです。

なお、この法案についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください(文科省のページにジャンプします)。

日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案:文部科学省

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