日本語学習者ってどんな間違いをすることが多いんですか?
予想もしない間違いが出てきて困ることって、結構あるのでしょうか?
日本語教師のHAIBARAです。
日本語学習者は、ときにこちらの予想の遥か斜め上をいく答えを返してきたり
なぜそうなったのか教師でも理解するのに時間がかかるような間違いをしたりすることがあります。
でもこれはごく普通のことです。
日本語教師をやっていたら日常。
学習者の理解度や学習スピード、日本語レベルは十人十色です(もちろん考え方や思考プロセスも)。
だからこそ日本語教師は、学習者から出る可能性の高い質問や誤用等を、授業準備の段階である程度考えておくと思いますが、日本語教師を始めたばかりだと、なかなか学習者の間違いを想像するのって難しいですよね。
そこで、当ブログ「nihongo base」では、これまでの私の日本語教師経験から、学習者が間違えることの多いものを
- 【1】語彙表現(言葉のチョイスやコロケーションなど)
- 【2】文法表現(助詞、文型、活用、文末など)
- 【3】漢字(読み方、書き方など)
- 【4】会話表現(日常会話でよく使うフレーズ、会話特有の言い回しなど)
の4つに分けて、シリーズ化して紹介していきたいと思います(この記事が好評だったら笑)。
第1弾の今回は、「N3(ぐらい)の語彙表現の誤用」を10個、ピックアップしてみました。
授業準備の効率化や、授業のイメージを掴むのに、少しでも役立ててもらえればうれしいです。
ちなみにランキングではないので、思い出した順です。
それでは早速、いきましょう!
N3レベル(ぐらい)の語彙表現のよくある誤用
【1】×多い、○多くの
「多い」はイ形容詞なので、学習者はそのまま後ろに名詞が接続できると思ってしまいがちです。
(だって他のイ形容詞がそうだから)
でもこの「多い」は、後ろに名詞が来るときは、「多くの+N」という形を取ります。
もっと単純にすれば、「たくさんの人が訪れました」でもOKですね。
これは中級レベルぐらいまでのクラスではよく起こる誤用です。
【2】×結ぶ、○繋ぐ
「繋ぐ」は定着率があまり良くない語彙で、代わりに「結ぶ」を使う人が結構います。
他にも、「インターネットに繋がらない」と言いたいときに
「インターネットがない」(これは許容かな)
「インターネットが悪い」(電波が悪いの意)
と言う人も結構います。
「つながる」「つなぐ」って、この「手」と「インターネット」以外は、そこまで日常での使用頻度が高くないので、なかなか頭の中に残らないのかもしれません(結ぶもそうだけど)。
【3】×される、○なる
解雇されることを「クビ」という言い方は結構印象に残るようで、「クビ」はすぐに出てくる学習者が多いです。
ただし、「社長/上司が部下/社員を…」 という場合は「クビにする」という形になるので、これに引っ張られて受け身でもこの形を使ってしまうようです。
ついでになぜか「クビに」の「に」が抜けることも多いです。
まあ普通に考えたら、「合格する」の反対は「不合格する」ですよねえ。
ややこしい。
【4】×声、○音
日本語では「人、動物」は「声」、その他は「音」と使い分けますが、その区別が明確ではない言語もあります。
そのため、本来は「音」を使うべきところで、「CDの声が小さい(これは人が喋っていることが多いのでややこしい)」「外の工事の声がうるさい」などの誤用が見られることがあります。
【5】×参加する、○受ける
✔️母語では「参加する」が他動詞として扱われている
✔️母語では「試験」との相性がいい共起語が「受ける」ではなく「参加する」や他の語彙になっている
このような理由から生まれる誤用だと思います。個人的にはこの誤用はかなり多い印象。
「試験に参加する」と助詞が正しければ、特に違和感のない場面もありますが。やはり自分が受験する時は、「試験を受ける」の方がしっくり来ますよね。
【6】×閉める、○消す
これは中国語話者を相手に何度か授業をしている人なら、誰でも聞いたことがあると思います。
中国語では「(装置や機械の電源を)つける」というときは「開ける」、「消す」というときは「閉める」を使います。
これも母語の干渉によるものですね。他の国の学習者からこの誤用を耳にすることは、少ないです。
【7】×似合っている、○合っている
「似合う」は日常生活での出現頻度が高い言葉ですが、N3ぐらいのレベルの学習者でしっかり使いこなせる人はあまり多くないと思います。
知っている人は多いが、正しく使いこなせる人は少ない
という印象です。
「合う」を使うべき文脈で「似合う」が出てきたり、逆もまた然りです。
共起語をしっかり区別できるように教えることが大切ですね。
参考↓
【8】○得意、×上手
「私は(科目)が上手です」というのは不自然に聞こえますよね。反対の「下手」も同様です。
「得意科目」「苦手科目」というように、勉強関係は「得意」と「苦手」を使うのが基本ですが、「上手」と「下手」の方が圧倒的に日常生活での出現頻度が高いので、こっちを使いたくなる学習者は多いです。
「日本語が…」のように、言語について言う場合は「上手」「下手」を使いますしね。
また、自分で自分のことを「上手」というのも、日本人にはあまり好まれない表現だと思います(「下手」はOKでしょう)。
【9】×気持ちが悪い、○機嫌が悪い・落ち込んでいる
「いやな気持ちになっている、機嫌が悪い、落ち込んでいる」のような感情を表すとき、
英語の「feel bad」のように表現する言語は結構あります。
その影響を受けて、このようなときに「気持ちが悪い」と言ってしまう学習者はいます。
これも私の周りではかなりよくあります。
初めてこれを聞いたときは、体の具合が悪いのかと思ったり、「キモい」みたいな感じで悪口を言われたのかと思ったりすることもあると思いますが、ショックを受けずに話をよく聞いてみてください。笑
【10】×兄弟(姉妹)、○いとこ
「いとこ」や「親戚の人」のことを兄弟や姉妹として一括りに表現してしまう誤用です。
「いとこ」や「兄・姉」などに相当する言葉がそもそも存在しない言語も珍しくないんですよね。
英語はその1つで、いとこは「cousin」がありますが、兄や弟はどちらも「brother」を使って表現しますよね。年上か年下かは別の単語をつけて補います。
ベトナム語でも「いとこ」に相当する言葉は使われていないので、「年上のいとこ」を「お兄さん」や「お姉さん」などと言うことがよくあります。
このような誤用が原因で、家族関係についての話は、いつの間にか日本人との間で誤解が生まれていることもあるので、注意が必要です。
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いかがでしたか。
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多くの方に読んでもらうことができれば、この「よくある誤用」シリーズは継続して記事を更新していきたいと思うので、ぜひよろしくお願いします!
誤用をまとめて知りたいという方はこちらの本もお勧めです↓
語彙編Part2はこちら↓
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