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類似文法の違いを見極める日本語の「文脈制限」のヒント【Part1】

類似文法の違いの説明のコツ

以前、類義語の違いを見分けるためのポイントについての記事がありましたが、文法はどのように類似表現を見分ければいいのでしょうか。

文法の場合も、基本的な考え方は同じです。

文法分析の方法や、文法の教え方のポイントは、こちらの2つの記事にまとめてあるので、併せて読んでみてください↓

新人日本語教師に送る文法分析のススメ
日本語教師が中級以上の文法を教えるときのキーポイント

また文法分析を楽にしてくれるオススメ文型辞典はこちら↓

新人教師の強い味方になる本はこちら↓

今回は、「具体的にどんなポイントを見れば、文法の前後件制限の違いが分かるのか

について解説していきたいと思います。

この記事は、こちらのツイート↓ をより詳しく解説した記事となっています。

※各特徴について1つ〜2つ文法表現を挙げていますが、その文法のみが持つ特徴というわけではなくて、今回紹介する特徴は、多くの文法表現に共通するものです。これを知っているだけで準備にかかる時間が大きく短縮できると思うので、ぜひ覚えて活用してみてください!

1. 意志か無意志か

例1|意志○、無意志×
(1)彼は逃げ遅れた子供を助けるために、燃えている建物に飛び込んだ。
(2)*医者はおじいさんの病気が治るために、10時間の大手術を行った。

解説▼
意志Vを許容するか、無意志Vを許容するかがルールになっている文法表現です。
この例の「ために」の前件は、動詞を使う場合、意志Vは許容しますが、(2)の「治る」のような無意志Vは共起しません。ちなみにこの「ために」は後件にも意志動作や話者の希望等が共起します。

例2|意志×、無意志○
(1)父が車で送ってくれたおかげで試験に間に合った
(2)*先生のおかげで、第一志望の学校に合格したい

解説▼
例1とは反対に、無意志Vか既成事実しか共起しないパターンです。
この「おかげで」の後件の場合は、意志Vが×ということではなくて、「たい」「つもり」など自分の意志や希望を表す表現が共起できないというルールがあります。

2. 事実か推測・意見か

例1|事実○、推測・意見×
(1)窓を開けたとたん、大きな鳥が部屋に飛び込んできた
(2)*たくさん汗をかいたので、家に着いたとたんシャワーを浴びたい
(3)*空港に着いたとたん電話してください

解説▼
この「Vたとたん」の場合、後件には既に発生した事実が入ります。
(2)(3)のように推測・意見・希望・命令などの内容は共起できません。

例2|事実×、推測・意見○
(1)40年間公務員として働いた父にすれば、息子の仕事がYouTuberというのは複雑だろう
(2)*日本人には簡単な漢字でも、ベトナム人のグエンさんにすればとても難しいです

解説▼
この「AにすればB」は、後件にAの人の考えや意見を話者が推測した内容が共起します。
Aに入るのが話者自身の場合は例外ですが、Aが他の人の場合は、「かもしれない/だろう/はずだ/と思う」などの推測表現が必須です(または省略されているけど推測が他で暗示されている)。

3. 動作Nか具体・普通Nか

例1|動作N○、その他のN×
(1)大会の開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
(2)受験にあたっての注意事項をよくお読みください。

この「にあたって」は前件にVかNが共起しますが、Nの場合は「開催/受験/採用/利用…」などの動作Nに限られます。「〜かたがた」「〜を余儀なくされる」など、このタイプの文法表現はかなりたくさんあります。

ちなみに、このポイントは語彙の共起語ルールを考えるときにもめちゃくちゃ役に立ちます

※「普通Nのみが共起する」文法はたくさんあって、あまり違いの発見に役立たないので省略です。

「動作Nのみ共起するか否か」という判断ポイントだけで十分だと思います。

4. プラスかマイナスか

これは、こちらの記事↓で紹介した「おかげ」と「せい」が参考になると思います。

解説▼
単純明快、前件・後件に入る内容が「プラス」か「マイナス」かという見分け方です。

ちなみに、大半は「話者にとって+/-」で判断するのですが、もう一歩踏み込むと、「聞き手にとって+/-」で判断する場合もあるので、その辺りも意識しておくといいと思います。

5. 変化を表すか状態を表すか

例1|変化○、状態×
(1)空が暗くなるにつれて人が少なくなった
(2)*空が暗くなるにつれて人が少ないです

解説▼
「AにつれてB」はAにもBにも変化を表す言葉が入ります。
変化を表す言葉とは、「〜なる」「増える/減る」などです。
このタイプの文法も結構たくさんあります。

※状態を表す内容のみOKで、変化を許容しない文法表現は少ないので省略です。

「変化を表す内容のみ共起するか否か」という判断ポイントを覚えてください。

6. 継続性を持つか否か

例1|継続○、非継続×
(1)日本へ来て以来一度も国に帰っていない
(2)*日本へ来て以来北海道へ旅行に行った

解説▼
Vて以来」の後件には、Vをした後で変化して、その後継続している状態が共起します。
(1)の「国に帰っていない」状態は、日本へ来た日からこの発話までの間、ずっと継続しているわけです。
対して(2)のように、継続性のない過去の事実は共起することができないのが、この「Vて以来」の特徴です。

例2|継続×、非継続○
(1)日本人の友達に勧められたのがきっかけで、この歌手のファンになりました。
(2)*アニメが好きなのがきっかけで、日本へ留学したいと思うようになりました。

解説▼
この「きっかけ」の前件は、先程の「以来」の後件とは反対に、継続性のある内容・状態性の内容は共起できません。「継続性のない出来事」が許容されます。

「アニメが好き」はある程度継続期間のある内容です。「昨日は好きじゃなくて今日は好き、明日はもう好きじゃない」ということはほとんどないですよね。

ここでは「アニメを見たこと/アニメが好きで、日本でアニメの仕事がしたいと思ったこと」などの形になると、許容されるようになります。

7. この記事のまとめ

類似表現の違いを知る”文脈制限”のヒント【Part1】

  • 1. 意志か無意志か
  • 2. 事実か推測・意見か
  • 3. 動作Nか具体・普通Nか
  • 4. プラスかマイナスか
  • 5. 変化を表すか状態を表すか
  • 6. 継続性を持つか否か

いかがでしたか?

このような類似表現を見分けるポイントは、他にもまだまだたくさんあるので、今後その他のものも紹介していくつもりです。お楽しみに!

【Part2】を見る↓

多くの文法ルールのヒントを手っ取り早く知れるオススメ文型辞典はこちら↓

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