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【例文付き】似ている文法の違いが簡単に分かる日本語の「文脈制限」【Part3】

日本語の類似文法の違い

文法を調べたり考えたりするのに時間がかかって困っています…

何かコツはあるのでしょうか。

以前こちらの2つの記事で、日本語教師が覚えておくと便利な「文脈制限のルール」を紹介しました。

各文法表現が、共起する内容にどんな制限(ルール)を持っているか(例えば後件に「事実」だけを許容する、「推測や意見」だけを許容する、「悪い内容」だけを許容する等)というのを、このブログでは「文脈制限」と呼んでいます。

多くの文法が持っている(つまり授業準備の際に役に立ちやすい)文脈制限を知っておくことで、準備時間を短縮しよう!というのがこの2つの記事の趣旨です。

今回の記事では、その【Part3】として、知っておくと文法分析作業がグッと楽になる「文脈制限のルール」を新たに5つ紹介します。

頻出の文脈制限を知っていれば、

この2つの文法、何が違うんだろう
外国人学習者が作ったこの文、どうして不自然に感じるんだろう

という悩みをすぐに解決できることが増えます。

その結果として、授業準備の時間が大幅に短縮できるし、授業中の誤用訂正や質問対応にも余裕を持って臨めるようになります。

なお、ここで紹介する文脈制限は、多くの文法(や語彙表現)が共通して持っているものです。

例文で挙げている文法以外にも、この文脈制限を使えば解決できるものがたくさんあるので、ぜひPart1、2と併せて活用してみてください。

こんな人にオススメ!

✔️文法を調べたり考えたりする時間を減らしたい!
✔️誤用訂正や質問対応がスムーズにできるようになりたい!

1. 「普通はこうなる」という話者の前提・期待が「起こらない」場合に使う

(1)父は「銭湯に行ってくる」と言って出て行ったきり、いなくなってしまった。
(2)*私は去年の4月に日本に来たきり、ずっと日本語を勉強している。
(3)母は1か月間休むことなく働いている。
(4)?今日は朝ご飯を食べることなく学校に来た。

(1)(2)の「~たきり」は、「~してから、ずっと…状態が続いている」ときに使われますが、後件には、「普通は起こると想定されることが起こっていない」という内容が共起します。

(1)の場合、父親が銭湯に行き、普通はその後家に帰ってくることが想定されるにもかかわらず、それが起こっていない状態が続いています。

対して、(2)の文は違和感があるはずです。

「日本に来たあと、ずっと日本語を勉強している」というのが、普通に想定されることだからです(特に日本語学校の留学生の場合)。
この場合は、「日本に『来てから』」を使うのが普通です。

(3)(4)の「ことなく」は、「AことなくB」の形で、「AしないでBする」という文脈で使われます。

ただし、「AしないでBする」ことが、「凄い・異常」など、通常想定されない(と話者が判断している)場合に使うのが普通です。

(3)であれば、普通は土日が休みとか、少なくとも月に数回は休みがあるのが通常です。
それなのに、1か月間も休んでいないというのはかなり異常な事態であることが分かります。

他方、(4)の文はどこか不自然に感じると思います。

この文は、朝ご飯を食べずに学校に来ることが「凄いこと、異常なこと」であるかのような印象を与えるからです。
でも、実際は朝ご飯を食べない人はたくさんいるし、別にそれほど驚くことでもないですよね。

この場合は、普通は「朝ご飯を食べずに」などと言います。

学習者の混同が起きやすい表現

「~きり」… ~てから、~て以来、~てからというもの
「~ことなく」… ~ないで、~ずに

2. 話者の「心情」「気持ち」に関連する内容が共起する

(1)この曲を聞くにつけ、元カノのことを思い出してしまう。
(2)?父は出張するにつけ、お土産を買ってくる。
(3)このような賞をいただけるなんて、光栄の至りです。
(4)*ぜいたくの至りを尽くした料理が食卓に並んだ。

(1)(2)は「A(する)につけ、B」で「『A』をするときはいつもBの状態になる」という表現です。

B(後件)には「思い出す、腹が立つ、嬉しくなる、~と思う、~したくなる」など、話者の感情や思考に関係のある表現がよく共起し、意志行動は基本的に一緒に使いません。

なお、感情や思考以外にも、無意志の(自然にそういう状態になる)内容を許容する場合もあります。

類似の表現に「~たびに」がありますが、こちらは人が意志的な行動を繰り返す場合にも使うことができます。

「~につけ」「~たびに」は両方が「AのときはいつもB(を繰り返す)」という意味を持っていますが、後件の部分に違いが出ているということです。

(3)(4)の「~の至り」も同様に、「~」には気持ちに関わる言葉が共起します。

「赤面の至り」や「汗顔の至り」など生理現象っぽいものもありますが、「恥ずかしい」という感情を表す言い方なので、同範疇と考えます。

ここで違いの質問がよく出る類似表現として、「~の極み」がありますが、こちらは(4)のような感情以外の表現にも使うことができます。

(ただこの「至り」と「極み」は、似たような感情表現でも慣用的に使い分ける場合が多いので、授業では共起する言葉をセットで覚えてもらう方が実用的だとは思います)

学習者の混同が起きやすい表現

(1)(2)… ~たびに
(3)(4)… ~の極み

3. 話者の意志行動には使えない

(1)彼は明日日本に帰ってくるはずです。
(2)*僕は明日図書館に行くはずです。
(3)息子は私がいないのをいいことに、一日中ゲームをしていたようだ。
(4)*先生が出て行ったのをいいことに、私はカンニングを始めた。

さきほどの2で紹介したものと似ていますが、ここで紹介するのは「話者の」意志行動には使えないものです(つまり他者の場合は使える)。

まず、(2)のように、「~はず」などの推量表現は、これからの自分の意志的な行動には使えません

「はず」は「ある根拠があるから、その結果…と推測できる」というときに使う表現です。

そのため、自分で決める自分の予定や行動に使うのは不自然です。

ただし、「合格しているはずだ」のように自分の意志で決定できないことや、「歯医者は5時からだったはず」など、既に決まっていたスケジュールがうろ覚えの場合、「鞄に入れたはずなんですが…」のように思っていたことが事実と異なっている(過去の自分の行動を回想する)場合などは、話者の意志行動でも使えます。

なお、自分の未来の意志行動がはっきり決まっていない場合は、「行くかもしれない」「行かないと思う」など、根拠を示さずに単純に可能性の程度(または自信度)だけを言える表現を使うのが普通です。

加えて、(3)(4)の「~をいいことに」のように、推量表現以外でも自分の行動には使えないものもあります

特に、文法の中に動作主への批判(や賞賛)などが含まれる表現は、このような特徴を持つことが多いと思います。

反対に、「~したい」や、「~ことに、…」など、希望や感情を明確に示す表現は、話者自身のことにしか使えない場合が多くなっています。

学習者の混同が起きやすい表現

(1)(2)… かもしれない、~と思う

4. 社会常識や慣習、マナーに関する内容が共起する

(1)結婚式に黒いネクタイをしてくるものじゃないよ。
(2)*早く着きたかったら、この駅で乗り換えるものだよ。
(3)「絶対行く」と言ってしまったので、行かないわけにはいかない
(4)*遅刻した人は、課題を2枚追加で提出しないわけにはいかない

(1)(2)の「~ものだ」は社会常識やマナー的に、「~するのが普通だ」と言いたいときに使われる表現です。

(2)のような個人的なアドバイスの時には、「~ことだ」や「~方がいい」を使うのが普通ですが、「~ものだ」もこれらの表現と混同されがちです。

また、(3)(4)の「わけにはいかない」も「社会常識や状況的に~する必要がある/しない方がいい」場合に使われる表現です。

(4)のように法律や学則等で決められた義務や条件を説明する場合には、普通「なければならない」や「~する必要がある」を使います

学習者の混同が起きやすい表現

(1)(2)… ~することだ、~した方がいい、~べき
(3)(4)… ~しなければならない、~する必要がある、~してはいけない

5. 「できない」の意味を持つが、能力可能には使えない

(1)彼の話は信じがたい
(2)*この問題は僕には解きがたい
(3)その質問には答えかねます
(4)*フランス語は話しかねます

「~がたい」や「~かねる」、「~ようがない」などは、「~できない」の意味を含みますが、ほとんどの場合これらの表現は「状況的に難しい、不可能」という内容が共起し、能力的に「~できる」という内容は共起しません

また、英語や中国語などの多くの外国語では、能力や状況可能以外にも、許可や可能性など、様々な場面で可能表現を使います。

だから、この「状況可能のみ許容する表現」や「能力・状況どちらもOK」の表現、「禁止・許可」を表す表現との混同が頻繁に起きます

ちなみに、日本語の場合でも、逆に「能力可能にしか使えない」表現はかなり少ないと思います。

学習者の混同が起きやすい表現

(1)(2)(3)(4)… できる、その他能力可能を許容する表現

覚えるのが苦手な人は…

ここまで5つの文脈制限を紹介しましたが、Part1Part2と併せると16個もあるので、「全部覚えるのはちょっと…」という人もいると思います。

それでも文法を調べたり考えたりする時間は極力減らしたい、という方には、とりあえず文型辞典を買ってみることをお勧めします。

文型が出てくるたびに辞典を引くことになりますが、それでもウェブサイトを調べたり、自分で例文を考えたりするよりは大幅に時短できます

おススメの文型辞典はこちらの記事でまとめて紹介しているので、自分に合ったものを選んでみてください。

まとめ

いかがでしたか。

ここで紹介したものは、日本語の多様な文脈制限の一例にすぎませんが、これまでの私の日本語教師人生に於いて出現頻度が高かったものです。

これらの制限を知っておくと、これから文法を調べたり考えたりするときに、授業準備の短縮につながると思うので、ぜひ参考にしてみてください。

ちなみに【Part1】>【Part2】>【Part3】の順で出現頻度が高くなっています。

そのため、【Part1】と【Part2】を先に覚えることをお勧めします(今さら)。

類似表現の質問にしっかり答えるコツはこちら↓

学習者のよくある誤用はこちら↓

新人日本語教師におすすめの本はこちら↓

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