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類似文法の違いを見極める日本語の「文脈制限」のヒント【Part2】

日本語文法類似表現の違い

今回はこちらの記事↓の【Part2】です。まだの方はまず【Part1】から↓

このルールを知っていたら、文法の特徴や類似表現との違いがすぐに分かる!

というものを今回は5つ紹介します。

これを覚えているだけで、文法を調べたり考えたりする時間が短縮できるはず。

ぜひ参考にしてみてください。

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なお、各特徴について1つ〜2つ文法表現を挙げていますが、その表現のみが持つ特徴というわけではなくて、今回紹介する特徴は、多くの文法表現に共通するものです。

それでは【Part2】スタートです!

1. 話者が予想できたことか予想外のことか

例1|予想していたこと×、予想外○
(1)自分で作った練習問題のファイルをクリックしたとたんパソコンが動かなくなった
(2)*自分で作った練習問題のファイルをクリックしたとたんファイルが開いた
(3)*仕事が終わったとたん連絡してください

解説▼
このパターンは、後件が予想外の事実かどうかが焦点になっていることが多いです。

この例で扱っている「〜とたん」は、後件には想定外の事実が入ります。

そのため、(2)の例は不自然に感じると思います。ファイルをクリックしたらファイルが開くのは当然のことだし、そもそもそういう想定でクリックしますよね。

ちなみにパソコンが全くわからない人が使った場合なら、許容できると思います。

このタイプの文法では、(3)のように後件に話者の行動や命令、依頼、勧誘などの表現を使うこともできません。

これも話者が想定していること、というか話者の意志から発している内容だからです。

こういう文法、めちゃくちゃたくさんあります。

ちなみに反対に、予想していたこと○、予想外のこと×という文法表現は少ないです(というか予想外のことを入れると意味自体がおかしくなって、文が成立しなくなることがほとんどです)。

2. レベルが高いか低いか(日常性・難易度)

例1|レベル高×、レベル低○
(1)あの人は自分の部屋の片付けさえできない
(2)*あの人はパソコンを自分で作ることさえできない
(3)*引っ越したばかりなので、まだ3Dプリンターさえない

解説▼
「…さえ〜ない」という表現は、「…」の部分に最低限必要なものや、誰でもできるような簡単な内容が入って、「(レベルの低い/普通はある)…も〜ない」という使い方をします。

だから、「さえ」の前件には、(2)の「パソコンを自作する」のように高度な内容や、(3)のように、普通の人は持っていないようなものなどを一緒に使うことはできません。

例2|レベル高○、レベル低×
(1)毎月とは言わないまでも、せめて1年に1回ぐらいは顔を見せに帰ってきてほしい。
(2)*5年に1回とは言わないまでも、せめて10年に1回ぐらいは顔を見せに帰ってきてほしい。

解説▼
この「〜ないまでも」は反対にレベルが低い内容を前件に許容しない表現です。

例では「帰省」の頻度が焦点になっていますが、(1)のように(場所にはよるけど)毎月里帰りするのはかなり多い(=レベルが高い)ですよね。

「毎月、というのはまあかなり頻度が高いから、無理だとはわかっているけど、せめて1年に1回は…」というのがこの表現の伝えたいところです。

対照的に、(2)の「5年に1回」は頻度としてはかなり低いですよね。こういう内容は前件に許容しにくいのがこの「〜ないまでも」の特徴です。

(たとえばJLPTを受験するとき)「満点とは言わないまでも、せめて合格できる点数は取りたい」

などもよく使われる例文です。

3. 助言・命令・依頼の内容を許容するか否か

例1|助言・命令・依頼×
(1)春になる桜が咲きます
(1)*仕事が終わるすぐ連絡してください

解説▼

この「〜と、…」のように、後件に「依頼」「命令」「禁止」「助言」などの内容が共起しない文法表現はかなりたくさんあります

【Part1】に最も出現度の高いものを集めていますが、後件の違いや特徴を考えるときには、もしかしたら【Part1】の内容より、この項目の方が使えるかもしれません。

ちなみに、1に挙げた「『予想外』のことしか後件に許容しない文法表現」も、このルールに当てはまります。命令や依頼は話者から発するもの(=予想外であることはあり得ないもの)なので、当然と言えば当然ですね。

例2|助言・命令・依頼◎
(1)そんなに心配なら、電話なりメールなりで、連絡してみたらいいじゃん
(2)使わないなら、捨てるなり人にあげるなりはやく処分してよ。部屋が狭くなるから。

この「〜なり、…なり」は助言や提案、命令や依頼などの内容とかなり相性がいい文法表現です。

その他にもこのような内容の出現頻度が高い文法はありますが、これしか共起しない、というものは少ないと思います。

4. すでに起きたことか将来のこと・推測か

例1|すでに起きたこと○、将来のこと・推測×
(1)鈴木選手は、足の骨折をものともせず、試合に勝利した
(2)?鈴木選手は、足の骨折をものともせず試合に勝利するだろう

この「〜をものともせず」は、基本的には過去の事実か、過去〜現在まで続いている事実を後件にとります。(2)のように将来のことや推測などが後件に入ると不自然です。

ただしこれは完全に許容しないのか?と言えばそうでもないと思います。問題ないと言う人もまあまあいそう。

ただし各所の例文を見てみると、推測や将来の予想より、過去・現在の事実が後件に共起している文が圧倒的に多いので、例文や問題等を作成するときは注意しましょう。

あとは「おかげで」「せいで」「Vたとたん」「Vたかと思えば」なども後件に同様のルールがあります。

例2|すでに起きたこと×、将来のこと・推測○
(1)真面目なAさんのことだから遅刻なんてしないでしょ
(2)*真面目なAさんのことだから遅刻しなかった

この「〜ことだから、…」は、前件に【(話者が知っている)第3者+の】という形をとり、

「いつも〜/〜性格の○○さんだから、きっと…だろう」という使い方をします。

普段の行動や性格から、その人の行動や考え方を推測するときに使う表現なので、後件には、(2)のように既に起きた事実やその人の過去の行動等を入れることはできません。

5. 程度を表す言葉が必須かどうか

例1|程度を表す言葉が必須○
(1)この店は、味といいサービスといいかなりレベルが高い
(2)*このスマホはデザインといい機能といいたくさんの人が使っている

この「〜といい、〜といい、…」は何かを評価するときに使う言い方です。そのため、「…」の部分には、評価の程度を表す言葉(基本的には形容詞)が入ります

(2)のように、単なる事実が入ると文が成立しなくなります。

例2|程度を表す言葉が必須○
(1)Bさんは、留学経験がないにしては英語が上手だなあ
(2)Bさんは、留学経験がないにしては英語を話します

この「〜にしては」も同様に、後件には程度を表す言葉を使う必要があります。

この例では、「上手」という形容詞が入っていますね。

反対に、程度を表す言葉が必須ではない文法はたくさんあるので、ここでは割愛です。

4の項目で挙げた「過去・現在の事実のみ許容する文法」もこれに当たります。

いかがでしたか。

【Part1】には、より出現頻度の高い文法ルールや制限などをまとめているので、こちらも併せてチェックしてみてください。

続編【Part3】はこちらから↓

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