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【初心者必見!】日本語教師の「文法分析」のコツ

日本語教師の文法分析

文法の意味や類似表現との違いを調べるのって、大変ですよね…

日本語文法の構造や特徴、類似表現との違いを調べるのは、骨が折れる作業ですが、日本語教師として避けては通れない道です。

日本語教師になってしばらくの間、私がおそらく最も頭を悩ませ、多くの時間を費やしたのも、文法分析でした。
初級でももちろんそうですが、中級以上のレベルで扱う文法表現は似たような意味用法のものが多く、違いを考えれば考えるほど頭が混乱し、整理できなくなってくるというのは、日本語教師なら誰しも経験することです。

この記事では、その作業を効率化するための考え方について書いています。
効率的に文法分析を行うことができるようになれば、以下のようなメリットがあります。

【文法分析のコツを身につけるメリット】

  • 文法の用法や、類似表現との違いを効率的に見つけることができる
  • 文法表現に関する知識が整理され、学習者への説明が上手くなる
  • JLPTなどの文法問題を教えるときのポイントが見えてくる
  • 授業準備の時間が短縮できる

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とりあえず最初に知っておきたい最頻出の文法ルールはこちら↓

語彙の類義語の違いの見分け方が知りたい方はこちら↓

1. なぜ文法分析を行うのか

文法といっても、普段使っている日本語ですから、調べなくても大体身についているものではないのでしょうか?

普段使っている言語であるからこそ、感覚的で無意識の部分が多いのが日本語です。
日本語だけでなく、語学教師の役割は、そういう皆が無意識の部分に隠れている特徴や規則を解き明かして、その言語を学ぶ人に伝えることだと私は考えています。
日本語が「使える」ことと「教えられる」ことは、全くの別物だと思います。

また、学習者から授業中によく出てくる質問で、

AとBの違いは何ですか?

「(自分が作った)この文はどうしてダメですか

というのがあります。
文法分析をしっかり行っていないと、不意のこういう質問に答えられず、焦ってしまったり、感覚だけでその場凌ぎの説明をしてしまい、後で困ったりすることがあります。

2. 効率的に文法分析を行うには?

ではどうすれば効率的にこの作業を行えるようになるのでしょうか?

文法分析をするときの基本的な考え方は、

前件と後件の制限を考えること

です。

前件と後件、ですか…。よく分かりませんが…。

では、N3で出てくることの多い「AにしてはB」と「AわりにB」を例にして、実際にどのように分析を行うのかを見てみましょう。

この2つの文法表現は、どちらも「Aの状況では普通のに、実際はそうじゃなくてB」という意味を持つ表現です。N3〜N2ぐらいのクラスで、この2つの表現の違いの質問は必ず出てきます。

例文を見てみましょう。

①「え?サッカー初めてなの?初めてにしては、うまいなあ」
②リサさんは、長くイギリスに住んでいたわりに、英語があまり上手ではないですね。

このように使いますね。では、この2つの文法の違いを聞かれたら、どのように答えますか?
その時にキーとなるのが、上述の「前件と後件の制限」です。次の例文を見てください。

③*彼女は、年齢にしては、大人っぽくて落ち着いていますね。
④彼女は、年齢のわりに、大人っぽくて落ち着いていますね。

あ…!前に「年齢」がきたら、「にしては」は使えないですね。

その通りです。これが、「前件と後件の制限」です。

この文から分かることは、「にしては」を使う場合、「年齢」のように具体的に程度や様子がイメージできない言葉は前件に共起しないということです。

①は、「初めて」と経験の程度が明示されていて、「初めてサッカーをする=普通はあまり上手くない」ということがが具体的にイメージできますね。でも、「年齢」だけの場合、何歳ぐらいか分からないので、普通はどうなのか、ということがイメージできません。こういう言葉が前件に入る場合、「にしては」は使えないと考えることができます。

⑤彼女は、12歳にしては、大人っぽくて落ち着いていますね。

これだと、12歳(=小学校6年生)ということが分かるので、「にしては」を使っても自然な文だと感じるはずです。

逆に④の文が不自然ではないことから、「わりに」は前件が「年齢」のような具体的に程度や様子を表さない言葉でも、文を作れるということが分かります。これが「にしては」と「わりに」の違いの1つです。

なるほど。これだとシンプルで、学習者も納得してくれやすそうですね。

では、続けてこの2つの文法が持っている前件・後件制限をもう1つ見てみましょう。

⑤*彼は、毎日夜勤のアルバイトをしているにしては、今まで授業に遅刻したことがない。
⑥*彼は、毎日夜勤のアルバイトをしているわりに、今まで授業に遅刻したことがない。

うーん…。何だか不自然に感じますね。なぜなんでしょうか。

この文の不自然さのポイントは、後件にあります。①から④の例文と、この2つを比べてみてください。
すると、①~④が、程度を表す表現を使って、話者の意見や感想を述べているのに対し、⑤⑥の文は、後件が単なる事実の描写になっていることが分かると思います。

つまり、この2つの文法表現の後件には、基本的には

「話者の判断や意見・評価」または「程度を表す内容」

が来ることが分かります。

このように、文法表現の前後に共起している内容には、その表現の特徴や規則を端的に説明するヒントが含まれています。

私のこれまでの経験では、学習者が求めているのは、抽象的で感覚的な意味説明より、こういう分析過程を経た明確な文法ルールの説明だと思います。

3. 注意すべき点は?

大体のやり方は分かりましたが、文法分析をするときに注意すべきことは何かありますか?

文法分析をするときは、以下の点に注意することが必要です。

【文法分析の注意点】

  • できるだけ多くの例文を検索し、比較すること
  • 「意味」ではなく、あくまで「文法規則」の違いに注目すること
  • 自分の感覚を過信せず、フラットな視点で客観的に例文を見ること

いかにシンプルに、的確に、文法の違いや、非文が非文になる理由を説明できるか。
私は常にこれを意識して、授業準備をするようにしています。
文法分析で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

文法ルールを手っ取り早くたくさん知りたい方はこちら↓

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こちらの記事では類義語の見分け方について書いていますので、よければ併せて読んでみてください↓

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コメント

  1. 寺浦一夫 より:

    日本語教育能力試験の受験を検討している者です。記事を読んでいて、1つだけ気になる点があったので質問させてください。

    「年齢」の例文のところで、
    【あ…!前に「年齢」がきたら、「にしては」は使えないですね。】
    とありますが、「年齢」を「その年齢」にすると自然な日本語になると思えるのですが、間違っていますでしょうか?このような場合は、12歳という具体的な例に準ずるものと見なせるのでしょうか?

    よろしくお願いいたします。

    • コメントありがとうございます。
      その通りだと思います。
      「その年齢」と指示語がつくことで、1つ前の相手の発話で年齢への言及があったことが分かる(=この場合は若い年齢であることが分かる)ので、不自然さが消えます。
      ちなみに「にしては」は具体的な年齢が必要なわけではなく、「小学生にしては」などでも使えます。
      「程度がイメージできる(=この場合は「若い・幼い」ことが分かる)」表現があれば問題ありません。
      「12歳」でも「小学生」でも「その年齢」でもその条件は満たすことができると思います。

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