外国人の方が日本語を勉強する方法って、どのようなものがあるのでしょうか。
日本人として普通に生活していると、外国人向けの教材に触れる機会ってなかなかないですよね。
知り合いの外国人にオススメの日本語学習の教材や方法を聞かれて、困ってしまった、という人も少なくないはず。
この記事では、外国人向けの日本語学習方法や、実際の教材を紹介します。
オススメのウェブサイトやアプリ、日本語学校等で広く使われている教材などを取り上げているので、ボランティアやプライベートレッスン、友人のサポート等で外国人向けの日本語学習ツールを探している方は、ぜひ参考にしてみてください。
✔️外国人がよく使っている日本語学習ツールや教材が知りたい!
✔️知り合いの外国人の日本語の勉強をサポートしたい!
✔️便利な日本語学習サイトやアプリが知りたい!
1.無料で使える!日本語学習サイトや学習教材
このセクションでは、基本的に無料で使える外国人日本語学習者向けのウェブサイトを紹介します。
今は誰でもスマホやPCを所持する時代になり、インターネット上でも日本語学習ができるサービスが色々展開されています。
①つなひろ -つながるひろがる にほんごでのくらし-
✔️17の多言語対応
✔️生活場面ベースの教材
✔️動画とスクリプト・対訳あり
✔️習慣やマナー動画あり
こちらは文化庁が、日本語教室等がない地方に住む外国人の日本語学習をサポートする目的で運営しているサイトです。
中国語や英語、インドネシア語など、17の多言語対応で、日本に暮らす外国人が遭遇する生活の場面をベースに教材が作られています。
生活シーンごとに動画とスクリプト、対訳が用意されていて、生活にすぐに必要なフレーズや言葉を学ぶことができます。
動画があることによって実際の場面がイメージしやすく、特にレベル1は覚えるフレーズもかなり絞られているので、学習者の負担も少なく、効率的に日本人とのコミュニケーションが学べるサイトです。
また、学習教材以外にも、日本での生活の中で役立つ情報を紹介した動画(ゴミ出しのマナー、書類の書き方など)も用意されているので、生活に必要な知識やルールを知るのにも役に立ちます。
日本に住む外国人が、日本人の習慣や文化を知らないことによるトラブルは意外と多いものです。
このような情報が多言語で提供されていると、日本に来たばかりの外国人の生活の助けになりますね。
②いろどり -オンラインコース-
✔️動画やイラスト・音声が豊富
✔️最近のトレンドも取り入れたリアルな内容
✔️学習後にできるようになることが明確
✔️多言語解説あり
✔️教材はすべてDL可能
独立行政法人国際交流基金が制作した無料日本語学習教材「いろどり 生活の日本語」をもとにオンラインで無料で日本語が学べるように制作されたウェブサイトです。
こちらも動画やイラスト、音声などを使いながら、生活上のコミュニケーションに必要な日本語表現が学べるサイトになっています。
「いろどり」は、LINEでのメッセージやSNSの投稿、街中で見かける看板やチラシなども教材として豊富に扱っていて、学習者もとっつきやすい内容になっています。
「can-doシラバス」と呼ばれる「どんな場面で何ができるか」ということを目的にしたシラバスでテキストが構成されているので、生活の中でのコミュニケーションとの繋がりも明確な教材なのでオススメです。
多言語での文法解説も用意されていて、独習やプライベートレッスンなどでも活用しやすいサイト(教材)です。
「いろどり 生活の日本語」の教材サイトから、PDF版のテキストは全て無料でダウンロードして使うことができます。
なお、いろどりは練習用のアプリも提供されています。
App store または Google playから「いろどり 練習」と検索してみてください。
③まるごと
✔️副教材や音声がDL可能
✔️自主学習コースは無料で受講可能
✔️教師のサポートも受けられる
こちらも国際交流基金が運営しているサイトです。
教材(書籍・本冊)は有料(1,500~3,000円程度)ですが、副教材や音声は無料でダウンロードできます。オンラインで自主学習が無料で進められたり、日本人教師のサポートやグループレッスンが受けられたりするサイトで、学習者は自分のペースで勉強ができます。
クイズのような形で言葉や文法を学びながら、「いろどり」と同様にcan-doベースで学習が進んでいくので、実際の生活で「できること」が増えていくテキストです。
マイページでは学習の進み具合も都度確認できるので、勉強が進んでいくと達成感もあり、モチベーションの維持にも繋がります。
④NEWS -日本語教育コンテンツ共有システム-
✔️豊富な教材から目的やレベルに合ったものを探せる
✔️日本語教師に役立つ資料も豊富
文化庁が運営している、日本語学習教材やコンテンツを共有・検索できるウェブサイトです。
日本語教育機関や地方公共団体等が、仕事や生活・子供向けなど、様々な目的やレベルの教材を公開しているので、学習者に合ったテキストを探すことができます。
授業カリキュラムや評価方法などの教材もシェアされているので、日本語教師や、外国人のサポートをしたいという日本人の方にもオススメのウェブサイトです。
【関連】日本語教師の授業準備に役立つサイトをまとめた記事はこちら↓
2.日本語学校等でよく使われているテキスト
このセクションでは、主に日本語教育機関でよく使われているテキスト・教材等を紹介します。
自主学習やプライベートレッスンなどでは、オンライン教材やアプリ等を使っている外国人もたくさんいますが、日本語学校や専門学校等の集団授業では、やはりテキストを使った学習スタイルが主流になっています。
無料のものとは解説や学習項目のボリュームが大きく異なりますしね。
①みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ
✔️古くから使われている日本語教育の定番
✔️副教材や翻訳解説本が充実
国内外で古くから使われている定番の本です。
日本語教師に「日本語の勉強に使うテキストの代表と言えば?」と聞くと、恐らくほとんどの人がこの「みんなの日本語」を挙げると思います。
授業に使えるイラストや活動集、かなり多くの言語に対応した翻訳・解説本などの副教材も充実しているので、国内の日本語教育機関の初級レベルのクラスでは、最も多く使われている教材です。
簡単な文法表現から勉強を始めて、徐々に難しい文法へとレベルアップしていく「文型シラバス」のテキストの代表格です。中級教材も出版されています。
②できる日本語初級
✔️場面シラバスの代表格
✔️場面・状況ベースで学習者が取り組みやすい
✔️教師の授業準備の負担を軽減可能
✔️実践に結び付く運用能力重視の教材
文型シラバスの教材について、昔からよく言われてきたデメリットとして、教師の授業準備の負担が大きいことと、学習したことが実践に結びつきにくいことが挙げられます。
このテキストは、そのような問題を解決するために「場面、状況ベース」で各課のレッスンが構成されています。
あらかじめイラストで場面設定をしておくことで、文型シラバスのテキストより教師の授業準備の負担も少なく、学習者も文型や言葉を使う場面がより明確にイメージでき、実践に結びつきやすいことがこのタイプのテキストの強みと言えます。
授業準備に苦労している日本語教師の方にもオススメ。
結構分厚い本ですが、その分ボリュームたっぷりで学び甲斐があります。
言葉や文法の学習を補強する副教材もリリースされています。
③JLPT対策テキスト
✔️JLPT合格に向けて集中的に取り組める
✔️やりたいセクションや問題に絞って練習できる
✔️実際に試験を受ける予定がある人に向いている
✔️本番を想定した模擬試験もある
JLPT(日本語能力試験)の対策テキストも、各出版社から多数リリースされています。
各レベル(N5~N1)の「言語知識(文字語彙/文法)・読解・聴解」のセクションごとに練習問題がたくさん収録されたドリル形式のものや、模擬試験形式のもの、語彙や文法を順番に学んでいけるもの、問題の解き方のコツを丁寧に解説したものなどがあります。
日本語学校では、①や②などの本と併用して初級から使用されている場合もあるし、初級がある程度終わってから、N4やN3ぐらいから本格的に使い始める場合もあります。
また、この手の本は海外でも多く出版されていて、中国人学習者などは、母語での解説がついたJLPT対策のテキストを日本に持って来ていることもしばしばです。
以下は教材の一例です。
【ドリル形式の本】
【模擬試験形式の本】
【語彙や文法が順番に学べる本(イラスト多め)】
【関連】日本語能力試験(JLPT)について詳しく知りたい方はこちら↓
④生教材(日本語の新聞やテレビ番組、DVDなど)
✔️本当に使われている日本語が学べる
✔️学習者の興味を惹きやすいものが多い
✔️教材はあらゆるところにあり、探しやすく種類も無限
言語等を勉強する人向けではなく、社会の中で実際に使われている(日本語教育で言えば、外国人向けに語彙や表現がコントロールされたものではなく、日本人向けに作られた)出版物や映像作品、もっと広く言えば街の看板やチラシ、アニメやマンガなどを「生教材(なまきょうざい)」と言います。
初級で飲食店のメニューを見ながら食べたいものを注文する練習をするとか、上級で新聞を読んで、書かれている内容について意見を述べあう等の方法で、生教材も日本語教育によく活用されています。
やはり勉強のために作られたテキストより、実際に日本人が使っているものの方が、学習者のモチベーションも上がりやすいので、ある程度基礎が出来た人には、積極的に生教材に触れていくことをオススメしたいです。
ちなみに、独学で日本語を勉強する人の中には、アニメやマンガから日本語を学ぶ人も少なくありません。
【関連】アニメだけで日本語がめちゃくちゃ上手くなった学習者の話↓
3.スマホでいつでも勉強できる!日本語学習アプリ
最近では、自宅での自主学習や、移動中の隙間時間などに、スマホアプリで日本語を勉強している外国人も多くなってきました。
このセクションでは、外国人によく使われていたり、ユニークな特徴を持っていたりする日本語学習アプリを紹介します。
アプリの一番の強みは、何といっても、テキストやオンラインでの勉強と違い、スマホ1つで手軽に勉強できることです。
ここで紹介するアプリは、内部課金が一部あったりしますが、基本的には無料でダウンロード・使用できるものです。
①Yomiwa JP Dictionary(多言語辞書)
【iOS】
【Android】
✔️多言語に対応した辞書
✔️写真から文字を認識して、翻訳や解説の提示が可能
✔️練習や暗記のための機能も装備
20以上の言語に対応した多機能辞書アプリ。
撮った写真から文字を認識して、翻訳や漢字の読み方を表示したり、手書きで漢字を検索したりできます。
中国人などの一部の漢字圏出身者以外にとっては、漢字仮名交じりの日本語の文章は、読み取るだけでも大変なので、日本で生活している外国人にはかなり役に立つアプリだと思います。
語彙のフラッシュカードを作成して覚えたかどうか確認したり、言葉や例文の読み上げ機能を使って発音を確認したりする機能もあり、様々な言葉や漢字を「調べて→確認して→練習して→覚える」というプロセスが、1つのアプリ内で完結する優れものです。
②Duolingo(デュオリンゴ)
【iOS】
【Android】
✔️RPGゲームのような感覚で勉強できる
✔️勉強に割ける時間に合わせてスケジュールの作成が可能
✔️アプリ内で勉強仲間が作れる
こちらは日本語専用ではないですが、ゲーム感覚で言葉の勉強や練習ができるので、初心者でも勉強に取り組みやすいアプリです。
問題を解くと経験値が貯まり、レベルを上げたりアイテムを集めたりしながら学習を進めていく形のアプリで、まるでRPGゲームをしているような感覚で勉強が進められます。
学習目標に応じて、1日5分~20分の勉強スケジュールが組んでもらえるので、レベルや時間に合わせて、自分のペースで無理なく勉強が継続できる作りになっています。
アプリ内の友達とスコアを競ったり、自分のスコアをシェアしたりできるので、一人では勉強が続きにくい学習者にもオススメです。
③JLPT test N1-N5 – Migii
【iOS】
【Android】
✔️豊富なJLPTの練習問題・模擬試験
✔️正答率や進行状況が確認できる
✔️レベルチェックや学習計画の作成も可能
JLPTの練習問題が豊富に用意されていて、自主学習でJLPT受験の準備を進めていくのに最適なアプリです。
セクションごとに自分の正答率や進行状況等が見られたり、模擬試験形式の問題にチャレンジして合否を判定してくれたりするので、JLPTの合格を目指す人が、モチベーションを維持しながら長期間使っていくのに適していると思います。
自分のレベルの確認や、90日間で合格するためにどのように勉強を進めれば良いか(の目安)や学習計画も示してくれるので、計画的に勉強を進めていきたい人にオススメのアプリです。
④Shirabe Jisho
【iOS】
【WEB】
✔️手書きで漢字検索が可能
✔️漢字をパーツで解体して勉強できる
✔️同じ部首やパーツを持つ漢字をまとめて覚えられる
✔️非漢字圏の学習者が、部首の便利さを理解するきっかけになる
こちらは漢字を手書きで検索できる無料アプリです。
このアプリの良いところは、漢字を部首やパーツで解体して、そのパーツを使った漢字をまとめて調べられるところです。
特にベトナムやフィリピン、インドネシアなど(もちろん欧米もね)の非漢字圏の学習者は、「漢字は文字というより記号や絵のように見える」とか「ひらがなやカタカナがあるのに何で漢字が必要なんだ…」と漢字に苦手意識を持ちがちです。
そのような学習者が、部首を覚えて漢字の意味を推測したり、似たような漢字をまとめて覚えたりするのに最適なアプリだと言えます。
4.その他の日本語学習方法・ツール
日本語学習に便利な/よく使われているウェブサイトやテキスト、アプリを紹介してきましたが、今はそれ以外にも、様々な日本語学習の方法があります。
ここでは最近利用者が増えている人気の日本語学習方法を紹介します。
①SNSを使って勉強する
✔️基本無料で勉強できる
✔️ニーズや勉強時間に合わせて様々な媒体がある
✔️学習者の母語で作られたものも豊富
例えばYouTubeでは、日本語の文法・語彙解説や、JLPTの対策などの動画が上がっているチャンネルが色々あります。
日本語で解説した動画だけではなく、各国の言葉で解説した動画を上げているチャンネルも結構たくさんあります。
また、InstagramやFacebookで、日本語の便利な表現や言葉を紹介・解説した画像を毎日投稿している人や、TikTokで日本語会話のワンポイントレッスンのような短い動画を上げている人もいます。
中国人やベトナム人で実際に日本語を勉強してきた人や、現地の教育機関が母国語で投稿しているものも少なくないので、初心者でも勉強を始めやすくなっています。
今はSNSを活用すれば、自分に合った方法で日本語を勉強することができるようになりましたね。
もちろん基本利用は全部無料です。
②アニメやマンガで勉強
✔️たのしい
✔️場面や人物関係が明確で理解しやすい
✔️その他のメリットは下の記事へジャンプ!
実はこれを学習動機・学習目的として挙げている学習者はかなり多いです。
2021年のJF(国際交流基金)の調査では、海外で日本語を学んでいる人の約6割が、マンガやアニメなどのサブカルチャーを学習目的として回答しています。
また、国で日常的に日本語のアニメやマンガ、ドラマ等に触れてきた学習者は、日本に来た直後でも、他の学習者より会話や作文での運用能力が高い傾向が見られます。
特に中国人や台湾人、韓国人などの学習者に多い印象です。
アニメやドラマ、マンガには、それだけ言語学習に最適な環境と、もっと理解したい!と思える魅力が揃っていると言えると思います。
【アニメと日本語学習の関係について解説した記事はこちら】
③オンライン授業を受講する
✔️場所や時間を問わず「先生と」勉強できる
✔️個人の細かいニーズにも対応できる
コロナ禍の影響もあり、ここ3年ぐらいの間で、日本語教育業界にもオンライン授業が急速に普及しました。
例えばpreplyやcafetalk、italkiなどのオンラインプラットフォームに登録する日本語教師もかなり増加し、日本語学習者は住んでいる場所に関係なく、オンラインでの日本語学習が格段にしやすくなりました。
1対1でフリートークをしたり、先に挙げた「いろどり」等の教材やイラスト等を使って日本語を勉強したりしている人が多いようです。
④Chat GPTなどのAIチャットを使う
✔️先生がいなくても指導やアドバイスが受けられる
✔️あらゆる要求に対応できる
✔️将来さらなる進化が期待できる
最近話題になっているのが、「Chat GPT」という、AIが質問に答えてくれるチャットサービスです。
間違った情報を返してくることがあったり、質問の仕方にコツが必要だったりと、まだ課題はたくさんありますが、今後日本語学習においてもこのChat GPTのようなAIを活用したサービスが重要な役割を担ってくるのは間違いないと思います。
日本語で質問をして返事をしてもらったり、日本語での会話ロールプレイの練習相手になってもらったり、日本語についての疑問を解決してもらったり、翻訳を提示してもらったり…
使い方次第で、外国語学習の大部分を担うことができる可能性を秘めている存在です。
5.まとめ
いかがでしたか。
日本語学習者のニーズや環境、勉強のスタイルも多様化してきた今、日本語教師も、ただ教室で教えるだけではなく、様々な形で日本語が教えられるスキルや能力が求められると思います。
日本語教師がこれから身につけておくべきスキルはこちらの記事で解説しているので、良ければ併せて読んでみてください。
【日本語教師+αのスキルが欲しい人にオススメの記事】
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