オタクの力は偉大だった話【Part1】

今回は、私が以前働いていた学校で出会った

ある中国人留学生の話

を紹介します。

入学式の日に初めて出会ったときは、ちょっと話すのがうまい程度の、ごく平凡な留学生にしか見えなかったのですが…

1. 出会い、そして始まり

6年ぐらい前の4月の話。

私は当時、某日本語学校で常勤講師として働いていました。

4月に入って空港で新入生を迎え、4月最初の金曜日に、入学式が行われました。

入学式の後はクラス決めのテスト。

その学校では、筆記と会話の2種類のテストを実施し、両方のテストの成績を判断材料に、新入生がどのクラスで勉強するかを決めることになっていました。

私は、会話テストを担当していました。

5人ほどテストを終え、次に私の前に座ったのが、中国人のHさん(♀)でした。

Hさんはクセのないキレイな日本語を話しました。

会話テストはあまり難しいものではありませんでしたが、来日したばかりの学習者の多くは、まだ耳や口が慣れておらず、すぐには聞き取れなかったり、うまく話せなかったりする人の方が多いです。

でもHさんは、こちらの言うことも問題なく聞き取れていて、自分のことを話すときも、すらすらと言葉が出てきていました。

HAIBARA
HAIBARA

Hさんは、どうして日本に来ましたか?

Hさん
Hさん

私はアニメが好きなんです。

だから、日本に来て、アニメの声優の勉強がしたいと思ったんです

日本のアニメは周知のように、世界でも認知度が高く、人気もあります。

だからこう答える人は結構います。

HAIBARA
HAIBARA

(心の声)はいはいアニメね、よくあるやつね

※補足※
もちろん全員ではありませんが、「アニメが好きだから日本へ来た」と答える留学生は、あまり将来のことを考えていないことが結構多いです。

なぜなら本気でアニメの「勉強」や「仕事」がしたくて日本に来るというのは結構な覚悟が必要で、就職も難しいので、本気でアニメを勉強するためにわざわざ留学する人は少ないからです。

Hさんの会話試験は特に何事もなく終了しました。

間違うことも詰まることもほとんどなかったので、その試験は満点をつけました。

ただ、このHさん、筆記試験の点数はあまり高くなく、結果的にはN3レベルのクラスで勉強を始めることになりました。

の判断が、のちに大きな波乱を巻き起こすことになります。

2. 最初の「能力の解放」

翌週から、Hさんのクラスの授業が始まりました。

Hさんの入ったクラスは偶然私の担当クラスだったので、授業でも顔を合わせることになりました。

HAIBARA
HAIBARA

(心の声)というか特に印象に残っていたわけでもなかったので、覚えていなかったかも…

私は自己紹介等を済ませ、授業を進めました。

新学期が始まったばかりのせいか、他のクラスメイトも様子を見ていて、そこまで活発に発言する人はいませんでした。

Hさんも大人しめで、私も特に彼女のことは気になりませんでした。

ところが、その日勉強した語彙を使ってペアで会話を発表しようという活動のとき、

Hさんが突然、その能力を解放します。

ちなみにこのときは主に家の中で使う語彙(掃除、家電、調理器具など)のところだったので、指定の語彙を使って親子か夫婦の短い会話を作ろうというテーマにしていました。

HAIBARA
HAIBARA

はい、じゃあHさんとMさんどうぞ

Hさん
Hさん

はい先生。

私はお母さん役で、Mさんは子供役です。

(スイッチON)

Hさん
Hさん

もう!また部屋を散らかして(未習語彙&用法)!お母さん、さっき掃除したばかりなのに、掃除したそばから(未習文法)散らかす(未習語彙)んだから…。何回言ったら(未習用法)わかるの(未習用法)!あんた(未習語彙)って(未習文法)子はほんとに(未習用法)…

Mさん
Mさん

クラスメイト
クラスメイト

HAIBARA
HAIBARA

…?

鳥肌が立ちました。

Hさんは急にスイッチを入れ、めちゃくちゃ自然な(お母さんの)日本語で、めちゃくちゃ感情豊かに話し出したのです。

そういえば声優志望って言ってた…と思い出したのは授業が終わってからでした。

他のクラスメイトはほとんど理解できず、唖然としていました。

教室が本当に

「シーン…」

となったのを今でも鮮明に覚えています。

N3レベルの勉強を始めたばかりのクラスで、(しかも新学期開始後3日目ぐらいで)ここまで流暢に日本語を使いこなす人を、私は見たことがありませんでした。

その上まさかそんなに表現力全開のロールプレイを繰り出してくるとは思っていなかったので、内容は理解できていたペア相手の学習者も、日本人の私も、もちろん他のクラスメイトも、全員がポカーンとなってしまいました。 

もちろんこれまでにも、他のクラスメイトより良くできる学習者はいましたが、ここまで他を置き去りにした人は初めてだったので、本当にゾクゾクしたというか、ドキドキしたというか、言いようのない感情の昂りが自分の中で起こったのを思い出します。

その後は、とりあえず会話を最後まで発表させ、Hさんが言ったことを私が簡単に説明して、次のペアの発表に移りました。

授業後、私はHさんと話をしました。

明らかにこのクラスではレベルが合わないと感じたからです。

HAIBARA
HAIBARA

もう1つ上のクラスで勉強してみませんか?

※補足※
会話がうまいだけでレベルを判断するのは浅はかだという意見もあると思いますが、ただ単に「会話が上手い」とかいうレベルじゃなかったことと、私の経験もまだまだ浅かったということで、そこは無罪放免としてください(そして結果的にこの判断は正解だったと後に分かります)。

そう提案すると、Hさんは謙遜しながらも、上のクラスに行きたいと意志を固めてくれました。

でも、一つ疑問が残りました。

「なぜこの人がN3レベルのクラスにいたのか」

本人に話を聞くと、次のような答えが返ってきました。

私、国でアニメを見ながら独学で勉強しただけだから、試験は苦手で、クラス分けのテストでは、あまりいい点数がとれなかったんです

アニメを見ていただけ…???

それだけでこんな日本語力が…?まさかね…。

彼女の話に、私は半信半疑でした。

まあでもとにかく、翌日からHさんは、一つ上の(N2レベルの)クラスで勉強することになります。

しかし、彼女の実力はこんなものではなかったのです。

つづく

この話の続きはこちら↓

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