アニメ好きな学習者って、日本語を話すのが上手な人が多い気がします。
「世界に誇る日本のアニメ」
という言葉はよく耳にすると思いますが
実際に日本のアニメの知名度は世界でも高く、
日本や日本語に興味を持つきっかけはアニメだった
という学習者は結構います。
特に日本語学校の留学生は18〜22歳ぐらいの年齢層に固まっていて
日本のアニメを今も見ている/日本のアニメを見て育った
という人も多いようです。
そんな中で、アニメ好きな学習者と話していると気づくことがあります。
「アニメ好きな人は会話がうまい」
アニメをたくさん見てきた学習者(=意識的かどうかは別として、アニメで日本語を独習してきた学習者)は、そうでない学習者より、コミュニケーションのスムーズさや、運用能力の高さ、会話語彙の量などの点で、明らかに優れていることが多いのです。
もちろんアニメを見る量や見方に依存する部分は大きいので、「ただ何となくアニメが好き」という程度ではそれがもたらす影響はあまり大きくないということは言っておきます。
ただ、この記事↓
に書いた学習者のように、毎日とか、2・3日に1回とかのハイペースで継続的にアニメを見続けている学習者は、会話における運用能力という点では、教科書等で日本語を学んできた学習者に対して、日本語学校への入学時点でかなりの差をつけていると言えます。
なぜこのような差が生まれるのでしょうか。
今回の記事では、アニメ視聴が日本語学習においてどのようなメリットをもたらすのかということについて、考えてみたいと思います。
✔️アニメ視聴が日本語学習にもたらす影響
✔️アニメを使うメリット
✔️アニメ型独習の注意点
✔️アニメを語学の勉強に活かす方法
1. アニメには常にキャラクターがいる
「アニメが好き」という人なら、大体そのアニメに登場するキャラクターの中で、「推しのキャラクター」や「好きなキャラクター」「嫌いなキャラクター」がいることがほとんどです。
そして、キャラクターを好きになったり、嫌いになったりするには、そのキャラクターの言動や性格、背景などを理解しておく必要があります。
アニメを見るときは、そのような要素を理解した上で(もしくは徐々に理解しながら)キャラクターが発する言葉を聞いていくので
■どのような感情を持ちながら話しているか
■どのような場面で話しているか
■どのような関係の相手に話しているか
などが理解しやすいという点がメリットの1つとして挙げられます。
また、自分の好きなキャラクターが発する言葉(特にここぞというときの決めゼリフ)は印象に残りやすいというのもあると思います。
「口グセ」があるキャラクターも結構いますよね。何度も発せられる言葉は耳にも残り覚えやすいでしょう。
「て形」の活用もできないのに、N2やN1の表現が織り交ぜられたアニメの名ゼリフは言える
という学習者も初級では珍しくありません。
2. アニメには常にストーリーがある
当然アニメはストーリーに基づいて進んでいきます。
でもこの「ストーリーがある」ということは、日本語学習を大いに助けてくれる重要な要素です。
■だれが、どんな理由で、どこに行って、何をするか
を明確にしてくれるからです。
教室の授業でも、どんな場所・場面・状況で、誰が話しているのかが説明されていない、もしくは想像できない状態で、文法を説明されたり、練習させられたりしても学習者は意味が分からず、ついていけません。
文法書や教科書等での独習の場合は、もちろんストーリーなんかありません。
その点アニメは常にストーリーに沿って話が進むので、場面や状況が理解できず迷子になるという可能性は低く、発せられる言葉が場面や状況とともに頭に入ってきやすいと言えます。
3. アニメには常に「場面設定」がある
1.と2.に述べた内容を見ると、日本語教師の人ならこう思うはず。
「アニメは常に場面設定されているんだ」
日本語教師は文型シラバスの場合、自ら場面設定をして、登場人物や状況を説明したり、モノや絵・写真などでそれを表現したりします。
場面シラバスの場合は、それぞれの課に場面と状況が設定されていて、その場面や状況でどのような表現を使うかを学んでいきます。
アニメはこのような準備や設定が常に行われていて、その中で発せられる日本語を聞いていくことになるので、言わば日本語教育の場で行われるような勉強の準備の部分が、最初から出来上がっていると言えます。
このような状態で多くの日本語に触れることができるので、アニメを見ている学習者は、
覚えた表現の使い方や、使う場面などが判断しやすく、それらが会話での運用能力として現れている
のではないか、と私は考えています。
4. アニメは音声と字幕で常に母語と日本語を対照できる
アニメを見ている学習者は、
■母語音声+日本語字幕
■母語字幕+日本語音声
の形式で見ていることが多い印象です。
もちろん日本語音声のみとか、日本語音声+日本語字幕とかその他の見方をしている人もいるのですが、この母語と日本語を同時に流しながら見るという方法が取れるのも、アニメの大きなメリットだと思います。
アニメ視聴というのは日本語学習という点から見れば基本的には独習形式なので、1〜3の場面設定を助ける要素がある中で、日本語の意味や発音、表記を常に母語と対照させながら確認できるというのは、かなり大きなメリットです。
■分からないところは何度も繰り返して見たり
■音声と字幕の言語を入れ替えて見たり
■一度母語でストーリーを把握してから次は日本語で見てみたり
母語と日本語の音声・字幕を活用すれば、独習でも日本語学習の方法を十分に広げることができます(もちろん、学習者自身がその気になれば)。
5. アニメ学習にもデメリットはある
ここまでアニメ型独習の優れている点を挙げてきましたが、見るアニメの種類によっては、もちろんデメリットも発生します。
△同じタイプのアニメばかり見ていると、身に付く語彙や表現のカテゴリやタイプに大きな偏りが出てしまう
△特殊な状況や非現実的な状況が多いアニメばかり見ていると、日常でよく使う表現とかけ離れたものばかり定着してしまう
△中途半端に覚えていると文法や語彙がめちゃくちゃな使い方になってしまう
アニメで日本語に触れてきた学習者に共通するのは「会話がうまいこと」と述べましたが、もう一つ共通して見られる傾向があります。
それは
「いきなり話し言葉で攻め込んでくる人が多い」
ということです。
アニメってやっぱり基本的には友達言葉で話していることが多い気がします。その影響で、
(良くないとは知らずに)初対面の教師相手にも「でもさあ」とか「〜だよ」とか「あのね」とか、友達言葉を使ってしまう学習者は多いです(個人的には使われても別に何も思いませんが)。
あとは例えば魔法や特殊能力、バトル系などのアニメばかり見ている人は
謎の特殊語彙はあるが、日常の基本語彙の抜け落ちがひどい
というようなこともあります。
バトル系のアニメで、たとえば「お箸」や「消しゴム」などの平和な語彙はあまり出てこないということでしょう(笑)。
まとめ
…いかがでしたか。
「アニメ好きな学習者」には会話能力が高い傾向がある理由について、私なりの考えを書いてみました。
ちなみにですが、これはドラマにも言えることだとは思います。
ただ全体的な傾向として、アニメは基本的には子供〜中高生向け、ドラマは大人向けに作られていると思うので、ドラマの方が使用語彙の難易度が高めで、状況や場面から発話の意味を推測しなければならない(=字義通りの解釈では正しく理解できない)状況が多いのではないかと思います。
だからどちらかというとアニメ、特にサザエさんのような日常生活が舞台のアニメが個人的には一番独習に向いているんじゃないかなあと思いました。
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