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類義語の違いをすぐに見分けるコツ【現役日本語教師が解説!】

類語の違いを見つける方法

授業の時、似たような言葉がたくさんあって、違いを教えるのに苦労しています…

何かいい方法はないでしょうか。

語彙の授業で悩むことが多いのが、類義語の違いの説明です。

特にN2やN1の語彙は同じような意味のものがたくさんあって、教科書によっては、同じセクションに似たような意味の語彙が大量にまとめられている場合もあります。

そうなると違いを調べるのも、授業で教えるのも大変…。

辞書や類語辞典も説明が曖昧で、イマイチすっきりしない…。
と思ったことがある人も多いはず。

今日は、下記の語彙を例として、スッキリ整理して類義語の違いを教えられるようになる方法を紹介します。

今回の類義語の皆さん→【壮大、盛大、絶大、膨大、過大】

1. 基本的な考え方

今回の類義語の皆さん→【壮大、盛大、絶大、膨大、過大】

たしかにどれも似たような意味ですね…。

すっきり違いを説明できそうにありません。

これらの言葉は、すべて、「〇大な…」の形で使う、ナ形容詞です。

どれも漢字のとおり「大きい/多い」などの意味を持ちますが、違いを質問されたらどう説明するか分からない人も多いと思います。

実は、類義語の違いは、「意味」ばかりに注目していると、なかなかスッキリ説明することはできません

文法の場合と同じように、ここで注目するのは

前後に共起する言葉

です。 

*文法の類似表現の違いの分析方法はこちら↓
新人日本語教師に送る文法分析のススメ

*文法のルールを手っ取り早くたくさん増やしたい人はこちら↓
面倒な文法調べを劇的に楽にする文型辞典6つ

これを探れば、自然と類義語の違いが見えてきます。

では、上の5つの言葉は、どんな言葉と共起するでしょうか。今回は、「○大な(  )」という形で、(  )に入る言葉にはどんなものがあるかを考えてみましょう。

先に一つポイントを言っておくと、共起語を考える際に大切なことは、

まず「最も典型的な例」を考えることです。

そこから少しずついろいろな語彙を入れてみて、どんなカテゴリの語彙が使えるかを考えていくと、共起語の共通点(=ルール)が見えてきます。

授業で扱う際にも、必ず「最も典型的な例」から出します。
そうすることでその語彙の柱となる用法や意味が理解でき、他の用法や意味も理解しやすくなります。

次のセクションで、具体的に見ていきましょう。

2.「○大な…」から見る、共起語の分類とルール化の方法

(1)壮大な〇〇

①壮大な景色、壮大な風景、壮大な自然、壮大な大地、壮大な建築…
②壮大な計画、壮大な冒険、壮大なドラマ、壮大なファンタジー…

→「壮大な〇〇」の共起語は、大きく分けて2種類あると言えます。

❶「景色」など、「視覚に訴える、大きなもの」。
自然の風景などに使うことが多いですが、「壮大な建築」なども十分許容できると思います。

❷「計画」や「ストーリー」系の言葉。
映画や小説の脚本などとも相性が良いと思います。

どちらかというと、プラスのイメージで用いられる語彙です。

(2)盛大な〇〇

①盛大なパーティー、盛大な結婚式、盛大な宴会…
②盛大な拍手、盛大な歓迎、盛大な嘘(△)

「盛り上がる」ものに使うというのが特徴です。

❶パーティー、結婚式などのイベント
読んで字のごとく。このタイプの言葉が最も典型的な例と言えます。

❷「拍手」「歓迎」「嘘(△)」
「拍手」はかなり結びつきが強い言葉ですね。
「嘘」は使用例を時々目にしますが、授業でわざわざこちらから提示する必要はないと思います。

これも(1)と同様、プラスのイメージで用いられる言葉です。

(3)絶大な〇〇

①絶大な人気、絶大な支持、絶大な権力、絶大な信頼、絶大な効果…

→ここは、他に例えようのない、他の追随を許さない、という意味で、「大衆から得るもの」が最もよく共起すると言えます。最も出現頻度が高いのは「人気」、そのほかに「支持」「信頼」などがこの部類ですね。「権力」や「効果」などはカテゴリが少し違いますが、よく出てくる言葉です。

これもどちらかというと、プラスのイメージの語彙に用いられる形容詞です。「権力」はプラスかどうか微妙ではありますが。

(4)膨大な〇〇

①膨大な量の仕事、膨大な時間、膨大なデータ、膨大な数の▲▲…

→これは基本的には、「大」の程度が「数や量で表せる」ものに使います。

「仕事」「時間」「データ」などは数や量が把握できますね。
反対に、「信頼」や「辛さ」など、程度が数や量で表せないものは共起しません。

こちらは(1)~(3)とは反対に、どちらかというと量や数が多いことをマイナスに捉えるときに使います。

(5)過大な〇〇

①過大な評価、過大な期待、過大な力…

→最後に「過大」ですが、これは、「本来のもの/実際のものよりも多い・大きい」というときに使う、というのがポイントです。

最もよく共起するのが、「評価」。「過大評価」と一つの名詞として扱われることも多いので、最も典型的な例としてはこの語彙を扱うのがよいでしょう。

その他で出現数が多いのは、「期待」「力」などです。「要求」というのがいくつかありましたが、数は少なく、「過大」より「過度」や「過剰」の方が相性は良さそうです。

期待や評価が実際より大きいことを、マイナスに捉えるときに使います。

3. まとめとオマケ

…それぞれの語彙の特徴が見えてきましたか?

学習者の「〇〇と▲▲の違いは何ですか?」という質問には、このような共起語・コロケーションの違いを答えた方が、長々と抽象的な説明をするよりも納得してもらえます

共起語やコロケーションを調べる際は、こちら(国立国語研究所HP)にまとめられているようなコーパス検索を使ったり、google検索(引用符付検索や語句除外検索など)を使用すると便利です。辞書や類語使い分け辞典等の例文も参考になると思います。

反対に、「『膨大』っていうのは、数が膨れ上がるほど多いっていう意味で…」という説明をしても、学習者は何を言っているのかよく分からないままで、理解できていないことが大半です。

最後に、類義語(の共起語)の違いを考えるときによく使うものをここに載せておきます↓

【類義語(の共起語)の違いを見分けるポイント】

  • プラスイメージかマイナスイメージか
  • 動作や行動を表すかどうか
  • 生き物・人間かモノか
  • 実体のあるものか抽象的なものか
  • 意志が含まれるものか無意志のものか
  • 日常的か非日常的か

ほかにもたくさんありますが、これで見分けられる類義語は結構あるので、語彙の教え方や授業準備に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

文法の教え方と授業準備のコツはこちらの記事で解説していますので、併せて読んでみてください

新人教師の強い味方になる本はこちら↓

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