授業中に不意に飛んできた質問の答えが分からないとき、いつも焦ってしまいます… 下手な対応をしてしまうと恥ずかしいし…
どうすればよいのでしょうか?
かく言う私も、日本語教師としてデビューしてから何か月かの間は、「授業時間が余ること」や「用意した説明が伝わらないこと」と同じぐらい怖かったのが
「答えを準備していない質問が飛んでくること」でした。
教案にすべての質問を予測して書いておくことはもちろん不可能だし、文法や語彙の知識が十分でなかったり、質問対応の経験が少なかったりするうちは、急に飛んできた質問に瞬時に答えるのは難しいものです。
的確な答えに辿り着くには時間がかかるし、かといって適当な答えで乗り切ろうとすると、あとで間違いが分かって他の曜日の先生を困らせたり、学習者の信頼を失ったりしかねないし…
そこで今回の記事では、不意に飛んできた質問の答えがとっさに出てこないとき、学習者の信頼を失わず、うまく対応したり切り抜けたりする方法を紹介します。
いきなり学習者から質問が来たら固まってしまったり、焦って授業の進行が飛んでしまったりして困っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
✔️日本語教師の仕事を始めたばかりで不安…
✔️学習者からの質問が怖い…
✔️質問に答えられないときの対策をしておきたい!
✔️授業中にもっとうまく立ち回りたい!
1. 例文を挙げながら考える時間を確保する
学習者からの質問の多くは以下の2タイプです。
・「AとBは何が違いますか?」という類似表現の違い
・「CはDのとき、どうして使えませんか?」という文脈制限に関するもの
こういうタイプの質問に瞬時に答えるには、文法や語彙の共起語、コロケーション、前後の文脈制限の知識が頭に入っていないといけません。
ある程度は予測して事前に準備できますが、預言者ではないので全ての質問の回答を準備することは不可能です。
そこで、とっさに答えが出てこないときは、学習者から質問があった表現を使った例文を考えて、ホワイトボードなどに書いていってください。
3~5文ぐらい並べるのがおススメです。
その際、A(やB)の表現が使える文と、使えない文を比較しながら羅列していくことが大切です。
スタンスとしては、例文を提示することによって、学習者に自ら答えを導き出させようとしている教師を装ってください。
そして、例文を書いている間や、学習者に考えてもらっている間に(隙に)、自分も並べた例文を頭の中で比較しながら、AとBの違いや、CがDのときどうして使えないかを考えてみてください。
これにより学習者に考えてもらいながら(=ただ待つだけの時間を作らずに)、答えを見つけられる場合が結構あります。
ちなみに、どんな例文を並べたら答えが見つけやすいかは、こちらの記事↓を参考にしてみてください。
2.「それは、例えばどんな文のとき?」と聞く
外国人相手の日本語授業だと、学習者の質問が言葉足らずで、質問の意図が十分にこちらに伝わらないことは多々あります。
それを逆手にとって時間を確保するのがこの方法です。
実際は質問の意図が大体分かっていたとしても
「うーん、例えばそれはどんな文のときですか?」
と聞き、学習者に例文を挙げてもらったり、状況を説明してもらったりしてください。
そうすることで、こちらが回答を考える時間が生まれます。
(1)は自分で例文を考える必要がありますが、この方法だと学習者に考えてもらうことができるので、時間的にも精神的にも(少し)余裕が生まれると思います。
また、実際に学習者に文脈や例文を挙げてもらうことで、誤用の原因や類似表現の違いのヒントが見え、答えが分かる場合もあります。
学習者も日本語で例文や説明を考えるので、教師の回答を待つだけになりません。
あくまでこちらは、学習者の説明が不足しているので、的確な回答を提供するために情報を求めている(ベテラン日本語教師の)スタンスで臨むことがこの方法のキーポイントです。
3. 他の学習者に投げかけてみる
皆さんも、これまで受けてきた学校教育の中で
「いい質問だね~。みんなどう思う?分かる人いる?」
と、生徒から出た質問をクラス全体に投げかける先生に出会ったことがあるのではないでしょうか。
勿論先生は答えが分かっていて、そのうえでクラス全体に考えさせている場合もあるでしょう。
そこがミソです。
スタンスとしては、学習者に自ら考えさせることに重きを置いている先生になりきってください。
そのうえで、よくできる学習者から的確な答えが出てくるのを待ちます(神頼みしながら)。
もちろん、その間に自分でも答えを考えます。
しばらく待って、欲しかった答えが学習者から出てきたら、まず自分の頭の中でいくつかの例文と照合してください。
そのうえで、それで説明がいけそうであれば
「その答えに君たちが気づくのを待ってた(悟)」というスタンスで
「そう。その通りです。よく分かりましたね」
と学習者を褒める日本語教師を装ってください。
また、学習者が間違った答えを言った場合でも、その答えから解決のきっかけが見えてくる場合もあります。
その場合は、「うん、いいところを見ていますね~」というスタンスで、別の学習者にも何人か聞いてみるのが有効です。
自分が考える時間を確保しつつ、自分は持っていない発想・着眼点(あるいは直接的な答え)を学習者からもらうチャンスがある方法がこれです。
なお、この方法は(1)と組み合わせれば更に多くの時間を確保できる強力な技となるので、(1)→(3)の流れで一緒に使ってみてください。
4.「次のコマ/次回までの宿題にするね」と言う
こちらはその場での回答を、合法的に堂々と回避する方法です。
もちろん、質問があるたびに毎回のように「今度答えるね」と言っていると信頼を失くしてしまいますが、本筋から少し逸れる質問や、鋭い質問があったときに使うぐらいなら何の問題もありません。
休み時間や授業後にゆっくり調べてから回答できるので、正確さも上がります。
また、提示した期限までにしっかり回答することで「ちゃんと約束を守る先生」と認識され、よく考えずにその場で適当に答えるより、信頼度も上がります。
ちなみに、授業の本筋に全く関係のない質問だった場合は
「その質問は本来の授業の流れからは大きく逸れている」というスタンスで、全身に自信を漲らせながら「それは関係ないからまた今度ね」と言うのも有りです。
事実、質問好きな学習者の発言に1つ1つ丁寧に対応していると、その日に終わらせないといけない部分がしっかり消化できないということもあります。
特にクラス授業の場合は他の学習者が置き去りになってしまいがちなので、注意が必要です。
そう考えると、この回避方法は、日本語教師がしっかり身につけておくべきスキルとも言えます。
「質問に答えない」というのは、新人の頃は勇気が要るかもしれませんが、他の学習者のことを考えれば、そちらの方が結果的に信頼を得る行動になる場合も多くあります。
5. 学習者と一緒に調べる
最近ではプロジェクター等を使用して1つの画面を教師と学習者が授業中に共有する機会も増えてきました。
そういう場合、この環境を活かさない手はありません。
質問が出たら、お決まりの「いい質問だね」をキメてから、「じゃあ一緒に例文を見てみようか」と言って、文法や語彙表現(を含む例文)をネット検索してください。
ブログや教材サイト等に掲載されている例文から答えが導き出せることもあるし、探していた答えがそのサイトから見つかることもあります。
個人的にはこれは全然悪いことではないと考えています。
その場で考えた適当な答えで躱すより数倍マシでしょう。
必要な答えが見つかったら、掲載されている例文を読ませたり、書かれているポイントを読ませたりしながら、クラス全体での主体的な調べ学習をファシリテートする教師を装ってください。
まとめ
いかがでしたか。
日本語教師を始めたばかりの頃は「どんな質問が飛んでくるか」が不安になって、授業をするのが億劫になることもあるかもしれません。
ただ、この記事に挙げた方法を駆使しながら質問対応の経験を積んでいくことで、文法や語彙、頻出の質問の傾向、学習者が求めている答えなどが徐々に分かってくると思います。
慣れてくると、学習者に質問してもらえるのが楽しくなってくるし、不意の質問でも焦らずに、学習者と一緒に答えを見つけることができるようになってくると思います。
今回紹介した方法を活用しながら、質問予測や質問対応スキルを実戦の中で身につけていってください。
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