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【日本語教師】ある日突然試験対策授業の担当になったら【JLPT、EJU】

日本語教師の試験対策授業のコツ

JLPTやEJU等の試験対策授業を担当することが増えたのですが、どのように授業を進めればいいか分かりません。

時間が足りなくなることもよくあります。

日本語学校や専門学校等では、通常の日本語授業に加えて、JLPT(日本語能力試験)やEJU(日本留学試験)などの試験対策授業が行われることがよくあります。

ただ、日本語教師の中には、試験対策授業が苦手な人も一定数いるようで、以下のような相談を受けることも時々あります。

「『みんなの答えを確認して、正答を言う』の繰り返しになり、学習者が飽きてしまう」
「たくさんの語彙や文法が出てくるので、時間が足りなくなってしまう」

そこで今回は、JLPTやEJUなどの試験対策授業(問題解説の授業。模擬試験等も含む)を、学習者のモチベーションを維持しながら、しっかりと行うコツを紹介します。

JLPTやEJUだけでなく、他の試験対策授業でも役に立つと思うので、悩んでいる方はこの記事を読んで実践してみてください。

こんな人にオススメ!

✔️試験対策授業がうまくできるようになりたい!
✔️授業時間の配分をうまくコントロールしたい!
✔️学習者がついてくるような試験対策授業がしたい!

1. まずは試験の構成や問題形式、傾向を把握する

JLPTやEJUなど、日本語の試験の出題形式は独特です。

特にJLPTは問題形式が多岐に渡り、何となく解いているだけでは、形式や傾向が把握できない学習者もたくさんいます。

形式や傾向が違えば当然解き方も対策方法も変わってきます。
だから、教師は対策を行う試験がどんなものなのかをしっかり理解しておく必要があります。

(1)形式や傾向を知るには、公式の問題集を

試験を知るためには、EJUなど公式の過去問が発売されているものについては、過去問を分析するのが一番です。

何年分かを手に取って、問題形式や頻出のテーマ、出題傾向などを確認してみてください。

JLPTは過去問こそ公開されていないものの、公式から問題集が発売されています。
こちらは過去の本試験に出題された問題の中から、本試験1回分相当の問題が収録されています。

問題形式や設問のスタイルなどを知るには十分です。

問題形式や出題内容を見れば、これらの日本語の試験は、単に語彙や文法を暗記すれば解けるものではないと気づくはずです。 それが分かれば、自ずと教え方が変わってきます。

(2)問題以外の情報の把握も忘れずに

試験時間や合格点、問題数、採点方法など、問題以外の情報把握も大切です。

試験時間や問題数を知らないと時間配分を意識した練習はできないし、問題を解いているだけでは気づかないルールが設けられていることもあるからです。

例えばJLPTでは、全体の合格点の他に、各セクションに基準点(足切り点)が設けられています。

N1は全体の合格点が100/180点ですが、言語知識、読解、聴解の3つのセクションで各19/60点以上取らなければ不合格になります。

だから、たとえ言語知識と読解で満点(60点×2=120点)を取っていても、もし聴解が18点以下なら、合格することはできません。

「聴解は捨てる!」みたいな勉強法はできない訳です。

こういう情報は教師がしっかり把握して、学習者に伝える必要があります。

まとめ

✔️過去問や公式問題集で試験の問題形式、出題傾向などを知ろう
✔️合格点や試験時間、その他のルールもしっかりチェックしよう
✔️重要な情報の見落としがないように注意しよう

2. 授業で扱う問題は取捨選択する

扱う問題の種類や数、授業時間等にもよりますが、授業内で全ての問題の解説を行おうとすると、1つ1つにかける時間がどうしても少なくなってしまいます。

それに、例えば全員が正解している問題は、授業で扱う必要性がかなり低いですよね。

だから、試験対策授業を行う際は、事前に、またはその場で適切に問題を取捨選択し、必要なものだけを抜粋して解説することが大切です。

全部の問題を解説する必要はありません

取捨選択の方法について、2つのパターンを見てみましょう。

(1)事前に問題を解かせておく場合

授業の前に宿題等で問題を解かせておくなら、授業までに解答を回収してデータ化し、正答率や誤答数を数値化しましょう(Googleフォームで解答させるなどの方法も◎)。

そのうえで、間違いが多い問題や、普段よくできる学習者が間違えた所など、優先度の高い問題をピックアップしておきます。

逆に正答率の高い問題は、解説を行うリストから除外しても問題ありません。

(2)当日時間を取って問題を解かせる場合

当日時間を取って問題を解かせる場合は、机間巡視しながらある程度傾向を見ておきましょう。

明らかに出来が悪い問題や、クラス全体で答えが割れている問題などを探しておくと◎です。

それが難しい場合は、解説の際に、正答者に挙手してもらって正答率を確認したり、解説してほしい問題をリクエストしてもらったりするのが良いでしょう。

また、少しクセがあって難しい問題は授業準備の段階で確認して、最初から解説リストに加えておきましょう。

解説は大問ごとに区切って行うのが◎です。

大問ごとの大まかな時間配分を予め決めておいて、その時間内で扱える数の問題を解説しましょう。

そうすれば、時間が大幅に足りなくなるようなことはありません。
もちろん、正答率に応じて大問ごとの時間配分は変更しましょう。

まとめ

✔️非効率な全問解説は今すぐやめよう
✔️データ傾向や要望に応じて問題を取捨選択しよう
✔️大問ごとの大まかな時間配分を決め、時間を確保しよう

3. 正答までのプロセスを伝えることに重きを置く

学校の方針にもよりますが、問題集や模擬試験を使った試験対策授業の目的は、大抵の場合「試験の合格」や「点数アップ」または「試験の問題形式や傾向の理解」です。

「教えたい」気持ちが強い先生ほど、このゴールを忘れてしまいがちです。

この目的を達成するには、問題文から正答まで、どのような過程を経て辿り着くかをパターン化して示すことが大切です。
選択肢1つ1つの意味や使い方を丁寧に教えて、日常生活で使えるようにすることではありません。

この辺りは、通常の日本語授業との線引きが必要です。

また、試験対策授業では「既有知識で解けるにもかかわらず、多くの人が間違えている問題」に時間を使うのが◎です。
「未習表現の意味や使い方を知らなくて解けない問題」ではありません。

「知らないから解けない問題」はいくら考えても解けませんが、「知っているのに解けない問題」は解き方を身につければ簡単に正解に辿り着けます。

そして、解き方を身につければ、未習表現が出てきても、既習の部分からヒントを得て選択肢を消したり、正答を見つけたりすることもできます。

この方法を教えるのが、試験対策授業の大きな意義の1つです。
これは読解や聴解だけでなく、文法や語彙のセクションでも同じことが言えます(というか寧ろそちらの方が既有知識が重要)。

まとめ

✔️試験対策授業の目的は「試験の合格」や「点数アップ」
✔️正答への辿り着き方を教えるのが試験対策授業の意義
✔️「知っているのに解けない問題」の解説に時間を使おう

4. 文法や語彙は、助詞や文脈制限、共起語の解説を主にする

JLPTの言語知識(文法と語彙)セクションは問題の数が多いので、たとえ試験1回分でも、選択肢に新しい語彙や文法が出てくるたびに意味や使い方を説明していたら、時間がすぐに足りなくなってしまいます

そうなることを避け、「正答への辿り着き方」を身につけてもらうために、言語知識の解説では「『既習表現の』助詞や共起語、コロケーションのルール、文脈制限、話し手と聞き手の関係」を扱いましょう。

選択肢の消去や解答決定の根拠に繋がるのは、意味や使い方より圧倒的にこの「文法や語彙のルールとコンテクスト」です。

特にN1やN2レベルになると、「どの選択肢も意味は大体合っている」ことが多くなります。
その際に選択肢を消去したり、解答を確定させたりするために必要なのがこの知識です。

文法や語彙がある程度身についているのに正答率が低い学習者は、この部分の吟味ができておらず、大体の意味と雰囲気で解答を選んでいることが殆どです。
逆に言えば、ここがしっかり意識できるようになれば、このタイプの学習者の点数は飛躍的に伸びます。

また、解説に時間を使うのは「既習表現」を中心にしましょう。

未習表現については、意味の説明は「初級の表現で言い換えるとコレ」ぐらいの簡単なものに留め、答えを探すのに必要な助詞や共起語ルールを紹介して終わり、ぐらいの分量でいいと思います。

そもそも既習のものでも接続や共起語ルール、使える相手等が曖昧なのに、そこに新しいものをどんどん詰め込んでも定着しないからです。

既習のものが出題された際に確実に正解できるようになってきたら、未習のものへとどんどん広げていけばOKです(その間に既習のものが増えていくし、解説が必要な既習表現は減っていきます)。

まとめ

✔️言語知識は共起語や文脈制限、コンテクストを中心に解説しよう
✔️既有知識を使って正解できる問題パターンを増やしていこう

5. 正答の提示方法は状況に合わせて臨機応変に

問題解説の授業では、どこかのタイミングで正答を提示しますが、その方法が適切でないと、学習者のモチベーションが著しく下がってしまったり、授業が途端に上手くいかなくなったりすることもあります。

正答の提示方法は、以下の要素に合わせて臨機応変に変えていきましょう。

■扱う問題数
■残り時間
■クラスのモチベーション
■クラスのレベル など

少し具体的に見てみます。

(1)あまりモチベーションが高くないクラスで、時間は十分ある場合

最初に正答を提示せず、正答までのプロセスを一緒に辿っていく
過程の途中で選択肢の消去や解答の確定ができる部分が出てきたときは、クイズ形式で学習者に聞く。

あまり学びに積極的でないクラスで正答を最初に提示すると、正誤だけ見たら満足して、もう次の問題に意識が向いてしまいます。

(2)皆真面目で学習意欲もあるクラスで、残り時間が少ない場合

大問やセクションごとに、最初に正答を一覧で提示する(スクリーンに映すなど)。
その後解説を希望する問題のリクエストを募ったり、誤答が多かったものをピックアップしたりして解説を進める。

聴解の場合は、もう一度聴きたいものを挙げてもらい、その問題だけ音源を聞きながら正答までのプロセスを確認する。

モチベーションの高いクラスで、毎問「Aさんは何番にした?Bさんは何番?」「○番だと思う人~?」などと聞いていると、かなりやる気を削いでしまうし時間も勿体ないので、避けた方が良いです。
まとめ

✔️正答をいつ、どのように提示するかも大切。状況に応じて提示方法を変えよう

6. 読解や聴解も、正答までの道筋をガイド

読解や聴解の問題でも、内容よりも正答までのプロセスの解説に重きを置きましょう。

短い1文の中でのルールや制限が問題になる語彙や文法とは違い、読解や聴解は文章や会話のまとまりの中でのルールや制限を探っていくのが基本になります。

全体の流れを読み/聞きながら、選択肢が消去できるポイントが出てきたら、そこにある(消去の根拠となる)接続詞や文末表現をピックアップして解説しましょう。

聴解では特に「肯定・否定」「動作主」「完了・未完」「賛成・反対」がキーになります。

また、例えば
「『確かに…』という書き出しの文が出てきたら、後続する逆接表現を探せば、そのあとに筆者が本当に言いたいことがある」
など、文章や会話の流れを読む上でキーとなる表現が出てきたらその辺りも適宜解説しましょう。

いずれにしても、文章や会話の内容それ自体よりも、話の流れや筆者の意見の方向を決めたり、設問の解答に繋がったりする表現の「試験での生かし方」を中心に解説していくことが大切です。

まとめ

✔️読解や聴解も正答までのプロセスを解説しよう
✔️選択肢消去の根拠となる表現を見つけよう
✔️文章の流れや筆者(話者)の意見を決める表現をチェックしよう

7. 根拠を見つけて選択肢を消去・選択するクセを

上でも少し書きましたが、知識があるのに正答率が低い人の傾向として、解答選択の根拠が曖昧で、何となくの意味や雰囲気で選んでしまっていることが挙げられます。

これは問題を解いている最中に(3)や(4)がしっかり意識できていないことに起因します。

本番の試験でしっかりした根拠をもとに解答できるようにするには、日頃から以下のことを学習者に徹底してもらうことをお勧めします。

■根拠がはっきりしない問題は解答せずに飛ばす
■飛ばす際も、できるだけ2択まで絞る
■2択に絞れない場合も、消去できる選択肢は消去する

本番の試験の場合、分からないところがあっても、勘でも何でも解答しなければなりません。
その1点が合否を左右する場合もあるからです。

しかし、練習や模擬試験では、根拠が曖昧なまま適当に答えて、それが偶然当たっても意味がありません

だから、常に根拠を見つけてから選択肢を消去することを意識してもらっています。
授業でもその意識づけができるように(3)や(4)を実践することが大切です。

「勘で選ぶにしても、2択まで絞れたら4択より確率が上がるよね?」

これは私が試験対策授業で大切にしている金言(作:おれ)の1つです。

まとめ

✔️練習では「根拠がなかったら解答しない」を徹底しよう
✔️日ごろから消去法を意識してもらえる授業を心がけよう

8. メンタルケアも意外と重要!?

JLPTの合否やEJUの点数は、特に大学等への進学を目指す留学生にとっては、人生を左右するほど重要なものだと言っても過言ではありません。

上位の学校は一定レベル以上のJLPTへの合格や、EJUでの一定以上の点数の取得を出願資格として設定しているからです。

つまり、試験の点数が悪かったり不合格になったりすると、第一志望の大学に出願することすら叶わないということです。

そのため、JLPTやEJUの対策授業には普段とは目の色を変えて取り組む人や、模擬試験の点数の悪さにひどく落ち込み、勉強に身が入らなくなってしまう人もたまにいます。

だから、特に試験直前の授業では、学習者の意欲や自信を喪失させてしまわないように、問題のレベルや扱う問題数、時間配分、学習者への問いかけなどをコントロールすることも必要です。

まとめ

✔️留学生にとってJLPTやEJUは想像以上に重要なもの
✔️学習者が自信を持って試験に臨めるように後押ししよう

まとめ

いかがでしたか。

思えば僕も日本語教師1年目の1週目からJLPT対策(1コマ)をぶち込まれ、右も左も分からないまま試験対策授業に臨み、苦労しました。

でも、今ではそれもいい思い出です。

同じように試験対策授業をいきなり担当することになった人や、いつも試験対策授業が上手くいかず困っている人にこの記事が届けば嬉しいです。

少しでもコツがわかった!という方は、ぜひSNS等でシェアしてください。

試験対策も、うまくできるととても楽しくなりますよ。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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