教案を作るのが大変です…
助けてください…
日本語教師養成講座に通った人や、普通の日本語教師ならだれでも一度は思ったことがあること。
それは「教案めんどくさい…」
ということでしょう。
はっきり言いますが、教案なんかなくても質を確保した授業はできます。
ただ、一応補足しておくと、ここで言う教案とは、いわゆるWordやExcelで作られた、枠が3つか4つぐらいに分けられているテンプレート的な「日本語教師の教案」の話です。
授業準備なんかしなくていいという意味ではないし、授業の到達目標やそのためにやるべきことを明確にしたり、伝わりやすい指示の出し方や訂正の仕方等を考えたりしておくことは不可欠です。
それを踏まえたうえで、この記事では、めんどくさがりで教案とサヨナラすることを夢見ている日本語教師になりたての方、または日本語教師を目指す皆さんに、「教案なしで授業をするために僕が実践したこと」をお伝えしたいと思います。
たぶん僕のように教案を作らずに授業をしている日本語教師の人はたくさんいると思います。
そういう人からすれば、こんなの当たり前じゃん、という内容かもしれませんが、まだ教案作成の呪縛から解き放たれていない方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本語教師は、別に教案なんか作らなくてもいいです。
✔️教案なんてめんどくさいから書きたくない!
✔️教案を無給で作らないといけないなんて納得できない
✔️教案は書きたくないが授業の質は落としたくない
序章:教案との出会い、そして別れ
(実践したことだけ知りたい方は、次のセクションへGO)
かく言う僕も教案を一度も書かずに日本語教師をやってきたわけではありません。
多くの日本語教師の方と同じように、養成講座で初めていわゆる「日本語教師の教案」の書き方を教えてもらい、Wordで作られた使いにくいテンプレートを渡され、イライラしながら「みんなの日本語」などの教案を作成していました。
幸か不幸か僕の通った養成講座は受講生が模擬授業をやる機会がほとんどなく、1回の模擬授業も10分~15分ぐらいと短かったので、手書きで適当に書いて乗り切ったりもしていました。
養成講座を無事修了して安心したのも束の間、この教案地獄は、日本語教師として働き始めてからも続きました。
僕が初めて非常勤講師として働いた日本語学校では、その学校に入ってから1年間は、授業の1週間前までに毎回常勤の先生に教案を提出するのがルールになっていました。
僕は当時週2回授業に入っていたので、毎週2回(×4コマ分)の教案提出期限が襲ってきました。
これが結構地獄でした。
文型辞典や文法書、教え方の手引き等の本を片手に、連日深夜まで教案と格闘しました。
「これ無給なの、なんで…」
と思いながらも、「これが日本語教師」とすっかり養成講座と勤務校の新人研修で洗脳されていた僕は、辛いと感じながらも、何とか(ところどころ手抜きしながら)こなしていました。
1つ補足すると、この学校では、教案を提出した後、常勤の先生が1時間ぐらいかけてフィードバックをしてくれたので、授業のアイデアや教える時のポイントなど、得たものはめちゃくちゃたくさんありました。だから今となってはこの経験ができて良かったと思っています(これも強制なのに無給だったけど)。
でも、1日1万円ももらえない授業の日のために、土日や他の日の夜に無給で教案を作成しなければならない状況には、当時から疑問を持っていました。
多分業界に染められた日本語教師がこの記事を見たら、
「新人だから勉強のため!作業に時間がかかるのは当たり前!教案は絶対必要!」
と言うと思いますが、事前準備に膨大な時間がかかるのに、こんな安い給料しかもらえないのがスタンダードなんて、どう考えてもおかしいです。
とはいっても、新人の頃はそもそも文法や語彙の知識、授業のアイデアが少ないので、それらを調べたり整理したりする作業にはどうしても時間がかかります。学習者からの質問も怖くて、準備していると終わりが見えなくなってしまいますよね。
僕は、それはある程度経験を積むまでは仕方ない、というかネットや文型辞典等を活用しながら、効率的に知識やアイデアを吸収して、蓄積したものはデータ管理して、早く準備にかかる時間を短縮できるようになろうと考えて行動しました。
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でも、デビューして何か月か経ったころから、授業は教案通りに進まない場合が多いことも実戦を通して分かってきていたし、教案って実際に学習者に配布するものでもないから、チェックを受ける必要がなくなれば、別に要らなくね?と思い始めていました。
だから僕は、この1年間の刑期が終わったら、教案作成なんかやめてやろうと決意しました。
以下、僕が日本語教師2年目から、実際に教案なしで授業をするために実践したことを紹介します。
これをやれば教案なんかなくても授業ができます。
ちなみに、教案提出を求められることがないなら、1年目からでも即実践することをオススメします。
教案作成なんて時間の無駄です。
1. 教科書に全部書き込んだ
最初にやったのは、教えるべきこと(文法・語彙表現のルールや使い方、注意点等)を教科書(かコピーしたプリント)に全部書き込むことでした。
そもそも教科書に沿って授業を進める場面では、教えるべきことを教案に書いていると、教科書と教案を行ったり来たりしないといけないので、めんどくさいし時間の無駄だなあと思っていました。
両方に書くのも現実的じゃないし…
だったら教案に書いていることを全部教科書に書き込めば、持ち物を1つに集約できるし、授業中に教案の該当箇所を見失って、時間を消費することもなくなるじゃん、と思いました。
個人的には、教科書は長く使っているとボロボロになっていくし、毎回授業に持っていくのは重いので、授業の該当箇所だけをコピーして、そのプリントに書き込むのがオススメです。
書き込みが終わったら必ずそれをスキャンしてデータ保存しておいてください。
次回同じところが当たっても印刷してそのまま、または情報を追加・修正するだけで使えるからです。
この積み重ねが将来の授業準備の大幅な時短にも繋がります。
教科書をスキャン→PCで書き込み→印刷という順番でもいいと思います。
ただ、前の週に勉強した文法や教科書の内容について質問されることもあるので、そういう場合には教科書を持っていた方がすぐに参照できて便利とも言えます。
あとは、プリントをたくさん使うと(これは絵カード等にも通じるけど)、順番が分からなくなることもよくあるので、よくテレビ番組のフリップとかでやっているように、裏に使う順番をメモして、授業前にその順に並べておくのが◎です。
この方法で、教科書に沿って進めればいい部分は、教案を書かなくても問題なく授業ができるようになりました。
- 説明や指示など、学習者に伝えるべき内容を全部教科書に書き込む
- 教科書またはプリントに書き込み、書き込んだものはデータ管理する
- プリントが多くなる場合は、番号を振って授業前に順に並べておく
2. 全部PPTに詰め込んだ
次にやったのは、授業で使う教材と、教案に書く内容を、すべてPPTに入れ込む方法です。
教科書に沿って授業を進めていく場合は1の方法で事足りるんですが、例えば文型シラバスでの導入とか、自由度の高い話し合い等の活動など、日本語の授業では教科書を使わずに進めていく部分も多々ありますよね。
そういう場合は、すべての内容をPPTに詰め込むようにしました。
学習者に見せる部分はスライドで、その他自分用のメモ(教案に書いている内容)はPPTの「ノート」部分に書き込むという方法です。
最近はこの方法で授業をしている先生も多くなってきましたね。
PPTを使うことによって、スライド上にイラストや文字等を配置して場面設定ができるので、レアリアを用意したりホワイトボードにイラストを貼ったり、文型シラバスで伝統的に行われてきた白々しい小芝居を打ったりする必要もなくなります。
オンラインで提供されている教材等も入れ込みやすいですね。
また、教案に板書計画を書いて、その通りホワイトボードに書くために努力するという作業も省略できる(その通りにならないことも多いしね)ので、授業中に学習者が教師の板書を待つ時間も省けるし、板書がぐちゃぐちゃになることもなく、字が汚くて読めないこともなく、学習者目線で見ても多くのプラスがあります。
僕は大事な部分の板書(の代わり)はPPTで示して、ホワイトボードはメモやイレギュラーな質問の対応用と役割を分けて使っていました。
この方法なら基本的にタブレットやPCの画面に必要なものは全て見えているので、教科書を使わない場合でも教案が要らなくなりました。
- 説明や指示など、学習者に伝えるべき内容を全部PPTに入れ込む
- 見せる部分はスライドに、メモはPPTのノートに分けて書く
- ホワイドボードはメモや質問対応に使って板書もすっきり
3. 教師用と学習者用のプリントを作るようにした
教科書が使いにくい場合(特に文型シラバスの文型導入)に、僕が良く使っていたもう1つの方法は、学習者にプリントを配布してそれに沿って授業を進めていく方法です。
この記事↓でも解説しているのですが、あらかじめ場面や人物の関係がはっきり分かる会話例をプリントに載せておいて、それを学習者に読んでもらい、その後活用や前後の制限を確認する形で説明を進めます。
これだと(物理的な)準備はその会話例を打ち込むことだけなので、従来の”文型導入”より格段に準備が楽です。また、文字にしているし、会話のやり取りで場面が想像できるので、場面設定や人物の関係も明確に伝わります。
この方法のポイントは、学習者用プリントと、教師用プリントの2種類を作ることです。
2種類と言っても、教師用プリントは、学習者用プリントに必要なメモを書き込んでいくだけです。
学習者用プリントは、動詞の接続や前後件の制限などの大事な項目は穴抜きにしておいて、会話例を見ながら考えてもらうようにしました。教師用プリントには、その部分の答えと補足などを書き(打ち)込んでおきます。
こうすることによって、プリント1枚で授業を進めることができるので、質を落とさず、準備も時短できて、授業も進めやすくなりました。
板書する内容もプリントに入れておけば、基本的には板書も要らないので、PPT使用の際と同様、ホワイトボードは必要なときに自由に使えるのもメリットです。
ある程度日本語レベルが上がると、会話文のバリエーションも増やせるし、学習者の興味を引きやすい内容を入れ込みやすくなるので、特に初中級以上のクラスで文法を教える時には、この方法をよく使うようになりました。
- 文法の説明と練習、板書はプリント1枚だけですっきり
- 学習者用と教師用の2種類のプリントを作って載せる内容(の量)を変える
- ホワイトボードは質問対応やメモなどに自由に使用
4. 場面・タスクシラバスの教科書を使うようにした
最後の方法は、場面やタスク、can-doなどをもとに構成されたシラバスの教科書を使うことです。
このタイプの教科書は、文型シラバスでは自分で考えなければならない場面設定や文型導入も、基本的には教科書がやってくれているので、教科書に沿って進められる=1の方法を使えるのがメリットです。
2や3の方法は、教案を作るよりは準備も授業も負担が軽減できますが、授業日数が多い場合はやはり多くの作業に時間を取られてしまうので、この4の方法が実践できる人は、これをやるのが一番いいと思います。
有名どころで言えば、「できる日本語」や「いろどり」、「まるごと」等が挙げられますね。
このタイプの教科書は、どんな場面で、何ができるようになるか、という課ごとの目標が明確です。
だから、新人の頃は何となく書いている人が多い教案の冒頭の「到達目標」も自分で考える必要がないし、良く分からない方向に授業が進んでしまうことも少ないので、個人レッスン等にもおすすめです。
使ったことがない人は、ぜひ1度手にとってみてください。
- 場面・タスク・can-doシラバスの教科書を使うことで準備時間を大幅短縮
- 1の「教科書に書き込む」方法と併用
- 課の目標ややることが明確で新人・個人・オンラインでも使いやすい
まとめ
いかがでしたか。
僕は、これらの方法を使うことで、多くの(昔ながらの)日本語教師が「当たり前にやらないといけない仕事」だと思っている教案作成から卒業し、かつ質を落とさず授業ができるようになりました。
1〜3をやりながら全てをデータとして蓄積していけば、同時に授業準備の時短も図れます。
授業準備時間の短縮についてはこちら↓の記事も参考にしてみてください。
教案作成の面倒くささにうんざりしている方、教案と教材を行ったり来たりしていて授業がやりにくいと感じている方は、ぜひ試してみてください。
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オススメの記事はこちら↓
新人日本語教師におすすめの本はこちら↓
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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コメント
ぜひ取り入れたい内容ばかりでした!!活用させてもらいます☺️
教案作成に多くの時間を掛けても授業中ずっと見ることは無理だし、モニター→教案→テキスト→板書、と行ったり来たり大変で困っていました。少し気持ちが楽になりました。
コメントありがとうございます。ぜひご活用ください!