外国人がよく間違える日本語をもっと知りたいです。
今回は、特に初級の日本語学習者によく見られる語彙の誤用例を10個紹介したいと思います。
日本語教師になりたての頃は、授業中に学習者の間違いをスムーズに訂正できずに困ってしまうことも多いはず。
多くの場合、それは授業準備の段階で、学習者からどんな間違いが出てくるかをイメージできていないことが原因です。
事前に学習者がよく間違えるものを知っておけば、それに備えてあらかじめ準備ができるし、授業中に焦ることも少なくなります。
学習者から出る誤用がイメージできない、または授業中にスムーズに訂正できないという不安がある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
また、こちら↓の記事でも誤用を紹介しているので、まだの人は併せてチェックしてみてください。
【Part1】
【Part2】
✔️日本語教師になる前に、外国人がよく間違える日本語を知っておきたい!
✔️誤用の傾向を知り、日本語の授業に生かしたい!
✔️外国人がなぜ語彙の間違いをするのか知りたい!
【1】「泊まる」「入院する」「住む」の混同
×母が先週うちに来て、3日間住んでいました。
○母が先週うちに来て、3日間泊まっていました。
こちらは中国語話者に多い間違いです。
「泊まる/住む」を表す場合に、母語では同じ言葉を使うのでこのような誤用が起きます。
一時的に寝起きする場合、自宅以外の場所やホテルは「泊まる」、病院は「入院する」を使いますよね。
【2】「遊ぶ」の使い方に関する誤用
×昨日は友達の家で、ゲームを遊びました。
○昨日は友達の家で、ゲームで遊びました。
○昨日は友達の家で、ゲームをしました。
「ゲーム」と共起する動詞は多くの言語で他動詞であることが多いので、「~を遊ぶ」と言いたくなる学習者は多いです。
「~を遊ぶ」という形は日本語にもありますが、通常「…で遊ぶ」と言いますよね。
また、「ゲーム」の場合は「ゲームをする」という言い方もよく使いますが、外国人にはこのイメージはなかなか掴みにくいようです。
【3】長音の有無の間違い
×この山はとてもゆめです。
×先生、これをコーピしてくれませんか?
×Aくんは日本語がじょずです。
×このばしょうは知りません。
○この山はとてもゆうめいです。
○先生、これをコピーしてくれませんか?
○Aくんは日本語がじょうずです。
○このばしょは知りません。
和語でも漢語でもカタカナ語でも、学習者にとって長音が含まれているかどうかを瞬時に判断するのはかなり難易度が高いです。
普通に話している分には文脈で問題なく伝わることが多いですが、作文等で実際に文字にしてもらうと、実は長音の有無を間違えていた、ということが往々にしてあります。これは初級だけでなく、上級に行っても常に付きまとう問題であると言えます。
【4】「○月」と「○か月」の混同
×私は日本語を3月勉強しました。
×私は10か月日本に来ました。
○私は日本語を3か月勉強しました。
○私は10月に日本に来ました。
月を表す「○月」と、期間を表す「○か月」の混同による誤用です。
ちなみに外国人が持っている在留カードの在留期間は、「1年6か月」という意味で、「1年6月」と記載されています。
これはややこしい…。そのほかの書類でもたまに「○か月」を「○月」と記載することがありますね。学習者泣かせです。
【5】「ぜひ」と「必ず/絶対」の混同
○私は一生懸命勉強して、次の試験に絶対合格します。
「ぜひ」は「『絶対』みたいな意味」ということ自体は、学習者の定着率が良い言葉です。
でも、「ぜひ」は基本的に聞き手に恩恵があることにしか使わないというところまでしっかり理解している学習者はあまり多くありません。
そういう人は、自分の強い意志や決意を表すために「ぜひ」を使いがちです。
参考↓
【6】「雨」を形容する言葉の間違い
×昨日大きい雨が降りました。
×昨日多い雨が降りました。
○昨日大雨が降りました。
○昨日強い/激しい雨が降りました。
これは「雨」だけではなく、「多い」「大きい」「強い」「高い」など(対義語も然り)の使い分けは学習者にとっては難しいものです。
言いたいことは大体「量が多い」とか「レベルが高い」ということなのですが、言葉によってどれを使うかが変わってくるので、正確に使いこなせるようになるには、時間がかかります。
【7】「give」に相当する言葉の混同
×先生、昨日の宿題をあげます!
×その人は私に請求書をあげました。
○先生、昨日の宿題を出します!
○その人は私に請求書を渡しました。
日本語の「あげる」は英語の「give」ほど万能ではなくて、基本的には相手がもらって嬉しいものに使います。
それ以外の場合は、場面や相手、受け渡すものによって、「出す(提出する)」「渡す」「与える」など様々な言葉が使い分けられます。
しっかりシチュエーションと言葉の組み合わせを理解していないと、このような間違いが起きます。
【8】「入れる」と「置く」の混同
○机の上にノートが置いてあります。
こちらも英語の「put」が両方カバーしている「置く」と「入れる」の使い分けが曖昧なことによる誤用です。
【9】「探す」と「見つける」の混同
×家の鍵を探さなかったので、遅刻しました。
中国語話者によく見られる間違いです。
中国語では、「見つからない」と言いたいとき、「找不到」(探しても、探しているものに到達できない)と言うので、そのまま「探せなかった/探さなかった」と日本語にしてしまうことによりこのような誤用が起きます。
「探しませんでした」と言われたら、「いや、探せよ」と言いたくなりますが、実はそういう意味ではないんです。
【10】「経験」と共起する言葉の誤用
×日本語学校で、いろいろな経験をもらいました。
×日本で3年ぐらい働いて、仕事の経験をもらいたいです。
○日本語学校で、いろいろな経験を得ました/しました。
○日本で3年ぐらい働いて、仕事の経験を積みたいです。
これは初級語彙ではないですが、特に経験を「積む」は定着率のかなり悪い動詞です。
すぐに使いこなせる人は珍しいと思います。
「経験をもらう」はイメージ的には理解できますが、日本語ではあまり使わない言い回しですね。
まとめ
いかがでしたか。
もちろん、ここに挙げたものはほんの一例で、すべての誤用を網羅することはできません。
10年以上日本語教師をしていても、予想外の間違いはたくさん出てきます。
大切なのは、現場経験を積みながら、授業中に出てきた学習者の誤用データを蓄積し、傾向をつかんでいくことです。
それに対する説明や対策などもまとめてデータ整理しておくとなお◎です。
これを日々の授業の後にやっていけば、誤用が出たときに、スムーズに訂正や説明ができずに焦ることも少なくなっていくと思います。
ぜひ早い段階から始めてみてください。
【Part1】はこちら↓
【Part2】はこちら↓
文法編はこちら↓
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