授業中に学習者からよく出てくる質問って、どのようなものがあるのでしょうか?
どんな質問が来るかイメージできなくて不安です…
日本語教師を初めて数か月の間は、おそらく授業の流れを作ったり、授業項目を滞りなく終わらせたりすることに精一杯で、学習者からの質問対応への準備が十分にできていない、という人が多いと思います。
そこで今回の記事では、授業中に学習者からよく出てくる質問と、そのような質問にどう対応すればいいかをまとめました。
✔️日本語教師になったばかりでいっぱいいっぱい
✔️もうすぐ日本語教師デビューするけど、学習者からの質問対応に不安がある…
という方は、ぜひ読んでみてください。
・よくある質問への対応方法が分かる!
1. AとBは同じですか
類似表現の違いが聞かれる
最もよく質問が出るのが、2つの類似表現の違いです。
日本語の勉強が進んでいくと、似たような言葉や文法表現が多くなってきます。
しっかり勉強している学習者は、ある表現を学ぶときに、
「この言い方、前に勉強したあの言い方と何が違うのかな?」
と疑問に思います。
外国語を勉強したことがある人なら、同じような経験をしたことがあるはず。
対処法は…?
まずは学習者がこれまで学んできた内容をしっかり把握することです。
文法や語彙を扱うときは、これまで学んできたものの中に、授業で教えるものと似ているものはないか?
を常に意識しておきましょう。
経験を積むと、「この文法/語彙のときは、あの文法/語彙との違いがよく聞かれる」というのが分かってきます。それをしっかりまとめてデータを蓄積していくことも大切です。
類似表現の違いの質問には、
その表現の前後に入る内容の違いや、使用場面の違いを答える
ようにしましょう。
その辺りの考え方はこちら↓の記事にまとめてあるので、詳しく知りたい方は読んでみてください。
具体的な例を見てみたい方はこちら↓
2. この文はどうしてダメですか
学習者が誤文を作ってしまったとき…
授業の中で、学習項目を使って文を作ってみたり、実際に会話してみたりするなかで、学習者が使い方を間違えてしまうことはよくあります。
そういう場合、もちろん教師は指摘して訂正することになりますが、その際によく出るのが
「どうしてダメですか?」
という質問です。
間違えた学習者は、何が理由でダメなのか、どの部分がダメなのかが知りたいんですよね。
対処法は…?
この質問への答え方は、上で挙げた「類似表現との違い」と同じで、
その表現の前後に入る内容のルールに注目します。
多くの誤用は、文法や語彙の前後に入る内容の制限を、学習者が守れていないことが原因で起こります。
簡単な例を見てみましょう。
たとえば「家に着いたとたん、…」
この「…」には、「話者の予想外の、既成事実」が入るという制限があります。
×家に着いたとたん、電話してください。
学習者が、この「Vたとたん」という言い方を「Vしたあとすぐに」という意味だけで理解してしまうと、上の×のような誤用が生まれます。×の文は「…」の部分に「〜してください」という依頼の表現が入っていますが、これは上述の「話者の予想外の、既成事実」というルールに当てはまらないので、不自然な言い方になっています。
ここを学習者に分かるレベルの言葉で説明することによって、納得してもらうことができます。
よく出てくる前後件のルールは、こちら↓の記事にまとめてあるので、参考にしてみてください。
3. どんなとき使えないですか
機能や構造、意味は理解したけど…
よくできる学習者から聞かれる傾向が強い質問です。
使える場面や文法ルールは分かったけど、使えない場面を知っておきたい
という思考からくる質問です。
私も外国語に触れるときには、この疑問が浮かんでくることが結構あります。
対処法は…?
まず1つはすでに上で説明している、前後件のルールをしっかり伝えることです。
例えば「相手にお願いをするときは使えない」とか「将来のことには使えない」とか。
もう1つは、いわゆるTPOについて説明することです。例えば
「友達や家族には言えるけど、会社の上司には言えない」
「日常の会話の中では使うけど、正式なスピーチや書き言葉では使わない」
などのように、場面や状況、相手によって使えない(使わない)ことがあるので、その辺りを整理しておくことが対応のポイントです。
4. いつ使いますか
使う場面や状況が伝わっていない…?
場面設定が曖昧なまま文法を説明したり、脈絡のない例文を羅列して導入したりした場合によく出てくるのがこの質問です。
導入、説明した後にこの質問がくるということは、その導入や説明が伝わっていない可能性が高いので、もう一度やり方を見直した方がいいかもしれません。
ただ、「すでに習ったAという言い方と大体同じなのに、なぜこの表現があるのか」「Aの言い方じゃなくてこの言い方じゃないとダメなときはあるのか」という意味でこの質問をしてくる学習者も時々います。
これは1で挙げた「AとBの違い」の質問に通じますね。
対処法は…?
まず導入・説明の方法を見直すことです。
この質問は、予め場面ややることが設定されている場面シラバス・タスクシラバスより、日本語教師が自分で場面設定をする必要がある文型シラバスの方で出やすいと思います。
文型シラバスでの授業の基本については、こちらの記事↓を参考にしてみてください。
そして、この質問があった場合は、3の項目と同様に、文法の前後件のルールと、使用するTPOを整理して説明するようにしましょう。
また、この質問があった場合は、その次の授業から、文法ルールとTPOがしっかり伝わることに重きをおいて、導入を考えてみることが大切です。
5. 日本人はよく使いますか
結局日常生活で使うかどうかが重要
日本人が使わない表現より、よく使う表現を覚えたいというのは当然の心理ですよね。
特にN2以上になると、語彙や文法の量も増え、似たようなものも多くなり、日常生活ではほとんど使うことがない表現もたくさん出てくるので、よく使うものを効率的に覚えていきたいと考える学習者も増えます。
そこで出てくるのがこの質問です。
対処法は…?
この質問で大切なのは、自分の感覚だけで答えないということです。
あなたの年齢、性別、育ってきた環境、周りにいる人などによって、「よく使うかどうか」は異なってくるからです。
20代の東京に住んでいる日本語教師と、60代の大阪に住んでいる日本語教師では、「よく使う」の感覚が想像しているよりも違います。
その辺りの感覚をなるべく一般的なものにするために、迷うものがあったら「複数の」「自分と環境の異なる」日本語教師や日本人の意見を聞くのが◎です。
また、テレビやYoutubeの動画、お店や電車での会話などにも常にアンテナを張って、どんな言葉がよく使われているのかに耳を傾けておくことも大切です。
新聞やニュースはやや特殊な語彙や言い回しが多いので注意が必要ですが、さまざまな人、メディアに触れておくことで、例えば「20代はよく使う」「ニュースではよく出てくる」など、場面や話者を分けながら日本人の使用頻度を説明することができるようになります。
まとめ
いかがでしたか。この5つは普段の授業の中で非常によく聞かれる質問です。
日本語教師をやっている限り、今後このような質問と常に向き合うことになるので、この記事を参考に自分なりの付き合い方を見つけてみてください。
また、もちろんこれ以外の質問もたくさん来ます。
ときに(というか結構日常茶飯事レベルで)学習者は、教師の想像とは全く違う角度からの質問をぶつけてきます。
このような質問は、経験を積むまでは骨が折れるというか、冷や汗をかくものですが、日本語教師のやりがい、存在価値の一つだと思います。
授業中の質問が多いということは、学習者は授業をしっかり聞いていて、教師の説明と向き合おうとしている証拠です。
真摯に質問に向き合うことで、学習者からの信頼を得ることができ、その後の授業がとてもやりやすくなるので頑張ってください。
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