「今度小学生の外国人児童に日本語を教えることになったのですが、どのような教材を使えばよいか分かりません…」
文科省の令和3年度の調査によると、国内の日本語指導が必要な児童生徒の数は約6万人となっており、その数は年々増えています(文科省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和3年度)」)。
しかし、公教育では、担当教員がいない、個別の指導計画の作成が難しい等の理由で、特別な日本語指導を受けられない児童生徒が一定数いることが長い間問題になっています。
登録日本語教員の国家資格創設が、日本語教育業界と公教育との連携促進や、この問題解決のきっかけづくりに繋がることが期待されていますが、登録日本語教員がどの程度公教育における日本語指導に貢献できるかは不透明です。
そのため、プライベートレッスンや地域の日本語教室など、多様な場所・方法での子どもの日本語学習のサポートは、今後ますます求められるようになるでしょう。
そこで今回は、オンライン上で提供されていて、無料で使うことができる、便利な子ども向け日本語学習教材/ウェブサイトを紹介したいと思います。
提供されている教材をそのまま使うことができ、授業準備の負担も少ないものを厳選しました。
子どもの日本語教育に携わる機会のある人は、ぜひ参考にしてみてください。
✔子どもに日本語を教えるのに最適な教材が知りたい!
✔子どもの日本語教育って、何から教えればいいか分からない…
✔子どもに日本語を教えるのに良い本が見つからない…
1. YouTube「にほんごがくしゅうひろば」
兵庫教育大学が、神戸市教育委員会と共同で作成した動画教材が公開されている日本語学習用チャンネルです。
子どものための初期日本語学習教材として、学校でのサバイバル日本語や、日常生活での出現頻度の高い語彙などが動画を見ながら楽しく学べます。
・学校での場面会話が学べるシナリオ動画
・カテゴリ別に基本語彙をまとめて学べる語彙動画
の2種類が、合計80本以上公開されています(2023年9月現在)。
なお、チャンネル概要欄に掲載されているリンクから、指導者向け解説書や、動画内で出てくる語彙リストもダウンロードできるようになっています。
シナリオ動画は3~4部構成になっています。
最初の「みてみよう」のパートでは、学校でよくある場面がアニメーションで紹介され、その中で出てくる日本語フレーズを確認します。
その次に流れる「いってみよう」では、「みてみよう」で確認したフレーズを、流れに合わせて学習者が発話する時間が取られています。
最後に「もういっかいいってみよう」で会話の流れとキーフレーズを確認するパートがあります。
ときどき「れんしゅうしよう」というパートが含まれている動画もあって、キーフレーズを使った様々な表現が練習できます。
私も実際にプライベートレッスンで使っていますが、映像+音声+文字で示されるので、子どもでも飽きにくく、楽しく学んでいくことができます。
【にほんごがくしゅうひろば】
2. ちびむすドリル|幼児の学習素材館
日本人の幼児向けの様々な学習教材が提供されているサイトですが、外国人児童生徒の日本語学習に使えるものがたくさんあります。
・ひらがな、カタカナ、漢字学習
・時計の読み方、数の練習
・カルタ、すごろく、間違い探し
・語彙の絵カード
とにかく教材数が豊富で、プライベートレッスン等でも学習者のニーズや性格に合わせて様々な教材を選んで使うことができるのでおススメです。
私がよく使っているのは、間違い探しプリントです。
初期段階の学習者なら、絵を見ながら分かる単語を言ってもらいます。
もう少しレベルが上がった学習者の場合は、実際に間違い探しをしてもらって、どの部分が間違っているかを日本語で説明してもらっています。
ちなみにもう少し年齢が上、あるいは日本語レベルがある程度高い人向けの教材を探している場合は、小学生用、中学生用のプリントやワークシートを集めたページもあるので、そちらも併せてチェックしてみてください(「ちびむす 小学生」とかで検索すると出てきます)。
【ちびむすドリル|幼児の学習素材館】
3. こどもの日本語ライブラリ
こちらのサイトでは、外国ルーツの小学生・中学生向けの教材が作成されています。
トピックが設定されたひらがな・カタカナ練習帳や、学校内の場面別会話練習教材などがダウンロードできます。
会話練習教材は結構ボリュームがあるので、テキストとしてそのまま使えます。
また、教材の中には、語彙を使ったすごろくやビンゴ等、子どもが楽しみながら学べるミニゲーム(活動)も収録されているので、モチベーションも維持しやすいです。
下に貼ってあるリンクは教材ダウンロードページのものですが、同サイトの上部のボタンから、教案や指導例動画など、教師用の資料も見ることができます。
「指導計画例」のタブでは、小学生~中学生向けの会話・語彙授業の場面ごとの教案(結構詳細)や、そのレッスンで使用する教材のリンクが見られます。
「ビデオライブラリ」のタブからは、指導方法別の指導例を解説した動画が見られます。
授業準備や、実際の授業中の指示出し等の参考にもなると思います。
【こどもの日本語ライブラリ】
4. エリンと挑戦!にほんごテスト
国際交流基金から提供されている日本語学習用アプリです。
ゼロ~初級前半ぐらいの人向けなので、難易度も低めで子どもでも使いやすいです。
スマホアプリなので、本やテキストよりもとっつきやすく、いつでもどこでも使えるというのも大きなメリットの1つでしょう。
学習者の年齢もあまり気にせずに使えるかと思います。
学校、食べ物、日常生活など親しみやすいテーマが設定されています。
アプリ内では
・同じ絵のカードを合わる(神経衰弱)語彙練習ゲーム
・マンガの場面に合ったセリフをスマホに向かって言い、音声認識で正誤判定される練習
・基準を満たしたら合格証がもらえる複数のテスト
など、楽しみながら勉強が進められる工夫や機能がたくさん用意されています。
ただし英語とインドネシア語版しかないのでその点は注意が必要です。
【エリンと挑戦!にほんごテスト】
5. にほんごワーク
ひらがな、カタカナ練習の教材、基本語彙のイラストカード(カルタ形式)、ソーシャルスキルや日本文化に関わる場面タスク教材などがダウンロードできるサイトです。
イラスト付きの楽しいものもたくさんあるし、助詞や、動詞のコロケーション確認用の練習問題もあり、多様な練習・活動に使えます。
オススメは「知識・文法の問題」というところにあるイラスト付きの基本語彙のカード。
種類も豊富なので、作成者の意図通りカルタとしても使えるし、教室でやるような語彙確認のPP用にも使えます。
公認心理師の人が作ったっていうところも面白いです。
【にほんごワーク】
6. たのしい1年生
愛知県が作成した、小学校入学前の外国人児童生徒向けの教材です。
年齢的には5歳を対象にしていますが、小学校入学後の子どもにも十分使えます。
リンク先にPDF版教材(テキスト)があります。
あいさつ、学校で良く使う語彙、数字、動物や食べ物などの基本語彙が学べます。
この教材のいいところは、ポルトガル語、中国語、タガログ語、スペイン語、英語の5か国語翻訳がついているところです。
複数の国籍の児童生徒を相手にするときにも使えますね。
保護者用の手引き(小学校に関する情報をまとめた本みたいなもの)も提供されています。
【たのしい1年生】
7. 子ども向け日本語テキスト
「うーん、ウェブサイトやPDF教材も良いけど、やっぱりテキストを使って教えたい」
という日本語教師の方向けに、子ども向けの日本語指導に使える本もいくつか紹介しておきます。
教科書で教えることを検討している方は、参考にしてみてください。
(1)こどものにほんご〈1〉外国人の子どものための日本語
絵カード、練習帳などの副教材も充実。
「みんなの日本語」と同じスリーエーネットワークから出ている本です。
(2)外国人の子どものための日本語 絵でわかるかんたんかんじ80
漢字学習に最適。小学1年生の配当漢字80個が網羅されています。
2年生の漢字をまとめた「160」、3年生の漢字を掲載した「200」もあります。
(3)おひさま [はじめのいっぽ] ―子どものための日本語
絵や写真が多くて楽しい。幼稚園~小学校低学年向け。プライベートレッスン等にも最適です。
別冊でワークブックもあります。
(4)絵本で教えるにほんご|外国につながりのある児童のための授業づくり
その名の通り、絵本を使った日本語の教え方のアイデアが紹介された本です。
絵本は別で用意する必要がありますが、みん日1課~25課の内容(対応課が書かれている)を絵本で教えるための方法がたっぷり57課に分けて説明されています。
Kindle版があります。
(5)できる日本語 初級 本冊
これは特に子ども向けに作られた本ではありませんが、場面イラストを使いながら進んでいく教科書なので、子どもでもとっつきやすいです。
子どもの自由な発想を活かしながら日本語力を伸ばしていくのに最適です。Kindle版あり。
(6)中学生のにほんご 教科編 ―外国につながりのある生徒のための日本語―
こちらは中学生向けの、理科、社会、数学などの各教科の勉強に繋がる日本語が学べる本です。
サバイバル日本語を身につけるための「学校生活編」「社会生活編」もあります。
まとめ
いかがでしたか。
外国人でも、日本人でも、子どもは楽しく勉強が続けられることが何より大切だと思います。
子どもの日本語教育用の本やテキストは様々なものが出ていますが、ここで紹介したサイト・教材は子どもでも楽しく、ゲーム感覚で学べるものが多く、種類も豊富なのでおススメです。
ぜひ学習者のニーズに合ったものを選んで、活用してみてください。
何より無料でそのまま使えて、授業準備の負担も少ないのが良いところだと思います!
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