授業中に、学習者が私の授業をどのように感じているのかがよく分かりません…
日本語教師を始めたばかりの頃は、授業をこなすのに精一杯で、学習者の様子を見る余裕がないことも多いですよね。
また、ある程度教師との信頼関係ができたり、授業に慣れたりするまでは、学習者も正直な反応を見せてくれることは少なく、理解できていないことに教師側が気づきにくい場合もあります。
ただ、学習者の理解度を見極めて、必要に応じてフォローを入れることは、学習者からの信頼を得て、その後の授業をやりやすくするためには、とても重要なことだと言えます。
「分かりましたか?」と聞けばいい、という人もいると思いますが、ことあるごとに
「分かりましたか?」「大丈夫ですか?」
と連呼していると、自信のなさが学習者に伝わって、学習者を不安にさせてしまうこともあります。
そこで今回は、学習者が授業中に見せることの多い、
「納得・理解していないときのサイン」
を紹介したいと思います。
これを知っていれば、「分かりましたか?」と聞くことなく、学習者の理解度をある程度は把握できるようになるので、フォローを入れたり、説明をやり直したりするタイミングが見極めやすくなると思います。
ぜひ参考にしてみてください。
1. 教師が説明した後、表情が曇る/大人しくなる
これは比較的分かりやすいサインです。
納得しているときは頷きを見せたり自然な表情で聞いていたりしますが、理解していないときは頷きの頻度が落ちたり、笑顔が消えたりします。
また、それまで活発に発言していた人があまり喋らなくなるのも1つのサインです。
分からないから発言できない、というのは自然なことだと思います。
この部分については、普通に授業をしていると特に問題なく進んでいってしまうので、余裕がないうちは見逃しがちになるので注意しましょう。
これに気づくコツは、授業の中のセクションや段階を意識することです。
たとえば、まず1回の授業を
- WU
- 活動
- 説明
- 練習
などのセクションに分けて、その中でもいくつかの区切りを意識しておきます。
その上で、その区切りが1つ終わるごとに、学習者の表情や発言量を気にする習慣をつけると、頷きの量や発言量、表情などが変わったタイミングに気が付きやすくなると思います。
✔️頷きの回数や発言量が変わったタイミングを見逃さないようにしよう
✔️授業のセクションや区切りを意識しておこう
✔️1つのセクションや区切りが終わるごとに、学習者の様子の変化を見る習慣をつけよう
2. 何度か同じ質問をした後、間を置いてから「分かりました」と言う
学習者から質問が出るのは、
「積極的に知りたい」
という意識の表れで、その教師を信頼している、あるいは信頼したいと思っているから起こす行動だと思います。
ただ、質問への回答が曖昧だったり、求めている答えではなかったりすると、学習者のそのような気持ちは次第になくなっていってしまいます。
信頼性も下がっていきますよね。
そのサインの1つ目が、
「何度か同じ質問をする」
です。これは、1回目の答えでは納得できなかったから、もう一度説明してほしい、または違う説明を求めている、というサインです。
この時点では、特に問題ではないと思います。
黄色信号まではいかない、青信号点滅ぐらいです。
でも、ここで全く同じ説明を繰り返してしまったり、ズレた答えを返してしまったり、より意味のわからない回答(抽象度が上がってしまう、未習語彙が増えすぎてしまう など)をしてしまったりすると、
学習者は、
「この先生に聞いてもダメだ」と諦めてしまいます。
それがわかるのが2つ目のサイン
間を置いてからの「分かりました」
です。
この「分かりました」を発するときの学習者の表情は、曇っているか、苦笑いをしていることが多いです。
しっかり納得したときは、表情が明るく変化したり、頷きが増えたりしますよね。
その場合との違いを見逃さないことが大切です。
✔️同じ質問をされたときは、青信号点滅!慎重にフォローを入れよう
✔️間を置いての「分かりました」は危ないサイン
✔️本当に理解したときの「分かりました」との違いを見逃さないようにしよう
3. クラスメイトに母語で確認し始める
学習者同士の授業中の母語での会話は、同じ国の人が複数いるクラス授業では必ずあります。
ただ、その種類はいろいろあって、これまで自分の授業や、他の人の授業見学中に見たものだと、
- 意味や使い方などをクラスメイトに確認する
- 独り言で「どういう意味?」とか「分からない」とか
- 教師への悪口や非難
- 普通の私語
などがありました。
ここではこの中で、
「意味や使い方の確認」と独り言での「どういう意味?」「分からない」
について書きたいと思いますが、
学習者も初めは日本語で教師に質問したり、黙って聞いて理解しようとしたりするのですが、
「分からない」が続く時間が長くなったり、「分からない」のレベルがかなり上がったり(つまりは全然理解できない状態になったり)して、フラストレーションが溜まってくると、次第に
母語での「分からない」や「クラスメイトへの質問」
が増えてきます。
こういう状態のときに、
「はいはい、日本語で話しましょう〜」
とか
「静かにしてくださいね〜」
とか言っている教師がたまにいますが、これはさらに学習者のイライラを募らせることになります。
学習者からすれば、
「おまえの説明が分からないから聞いてるんだよ」
っていう話です。
僕は学習者が母語で何の話をしているのか知りたかったし、もし母語で悪口を言われていたらそれに気づけるようになりたかった(笑)というのもあって、学習者の母語は結構積極的に勉強しました。
もちろん限界はあるのですべての学習者の母語をマスターするのは難しいですが、
「分からない」とか「どういう意味?」とかぐらいは知っておくと、
このサインに気づきやすくなるので、それぐらいは勉強しておくのがオススメです。
もう少し母語が理解できるようになっておくと、
「これって…って意味だよね?」とか
「…と同じってことか」とか
「…と何が違うの?」とか
なども分かるようになるので、より学習者の理解度チェックがやりやすくなりますね。
✔️母語での「分からない」やクラスメイトへの確認が増えてきたら注意サイン
✔️「分からない」ときに母語使用を注意するのはかなり危険なので気をつけよう
✔️学習者の言語で「分からない」「どういう意味?」などの表現を知っておくと便利
4. 全体的にクラスの発言量が減る
さっきまで活発だったのに、文法の説明を始めると、途端にクラスが静かになった…
このような経験は、日本語教師をやっている人なら誰でも経験したことがあると思います。
やっぱり
わからない/つまらないと、黙ってしまう
という傾向はどこの国の学習者にもよくみられます。
元々黙って説明を聞いているタイプの学習者はもちろんいて、そういう人の個人レッスンなどの場合はあまり変化が見えないと思いますが、クラス授業だとこの発言量の変化は顕著に見てとれます。
全体に向かって問いかけるときや説明しているときの発言量を意識してみてください。
今日はうまくいった!
と思うときと、
準備の段階から何となくスッキリしなかった説明を学習者に向けてしたとき
とでは、学習者の発言量や反応速度が明らかに違います。
うまくいったときは説明中に「あー(納得)」という相槌があったり、
全体への問いかけに積極的に答える人がいたり、
説明した後に質問が飛んできたり、
説明が理解できないと起きない笑いが起きたりしますが、
後者の場合はそういう反応が減ります。
「手応えがないなあ…」とか「空気が重いなあ」と感じたことがある人は多いはず。
それはクラス全体からのサインです。違うアプローチで説明するか、空気を変えるアクションを起こしましょう。
↓参考↓
✔️うまくいっているときは説明中や説明後に活発な反応があることが多い
✔️分からないときはクラス全体の反応が薄くなる
✔️うまくいっていないときは、クラス全体の空気を変えることも大切
5. 辞書/携帯で調べ始める
授業中に辞書や携帯で言葉などを調べるのは、最近では普通になりました。
問題をやっているときや、言いたいことがあるときに携帯でサッと調べるのは特に問題ないことだと思います(学校によっては禁止しているところもあるみたいですが)。
でも、教師が説明している最中に辞書や携帯を多用する学習者がいたり、クラス全体でそういう人の割合が多かったりする場合は、注意が必要です。
辞書や携帯を使うのは、上記のようなパターンのときだけではないからです。
辞書の使用はおおよそ下記のようなパターンに分かれると思いますが…
- 問題や教科書の中の言葉が分からない
- 言いたいことがあるが、うまく表せない
- 教師の説明の中で、一部分からない言葉があった
- 教師の説明を聞いても意味が分からないから、今説明している語彙や文法を調べる
上の3つは問題ないと思いますが、
「教師の説明が分からないから、今説明している語彙や文法を調べる」
というパターンは理解していないというサインです。
これが深刻になると、最初から教師の説明を聞こうという姿勢を見せず、説明を始めると辞書や携帯で調べ始めるようになります。
説明が分からないから当然と言えば当然です。
こうなるまえに、辞書や携帯で調べている人が増えてきたり、頻度が上がっている人がいたりした場合は、このサインを見逃さず、対応策を打つことが大切です。
✔️説明を始めたら辞書/携帯を使い始める人がいる場合は危ないサイン
✔️説明時の辞書/携帯使用が増える前に授業を改善しよう
6. 冗談がウケなくなる
最後はコレ。
日本語の授業では、学習者の興味を引きやすいように、とっつきやすい話題や身近な話題などを入れることも多いと思います。
うまくいっているときは、教師自身の趣味の話や失敗エピソード、共感できる例文や導入・説明などに笑いが起きることもしばしばです。
でも、説明がうまくいっていない場合や、学習者の理解度が低い場合は、そのような冗談や面白い(はずの)話にも反応してくれなくなります。
1つは「理解できないから笑えない」というのもありますが、
そもそも説明がわかりにくい時点で、学習者の気持ちは離れているので、そういう冗談やエピソードなどに反応しにくくなるというのが主な原因だと思います。
空気が重くなると冗談や横道にそれた話などもしにくい雰囲気になりますし、その後の授業にも悪影響が出るので、このサインは未然に防いでいくのが理想ですね。
他のサインに比べると軽そうにみえますが、お互いに楽しく活発に授業を進めていくためには、結構重要なファクターだと思います。
✔️理解していないときは冗談がウケなくなる
✔️ウケない理由は「冗談が理解できないから」以外にもある
✔️お互い快適に授業を進めていくためには、無視できない重要ファクター
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いかがでしたか。
元ツイートはこちら↓
授業に慣れない頃は、学習者の様子に意識を向けるのはなかなか大変だと思いますが、こういうサインは日頃から意識する習慣をつけておくことで早期に気付けるようになります。
少しずつでもいいので、毎回の授業で学習者の様子を冷静に見るタイミングを増やしていってください。
サインを早期に発見して、学習者が離れていく前に授業を改善できるように、頑張っていきましょう!
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