日本語学習者に、無料で多読ができるウェブサイトを紹介したいのですが、手軽に使えるものはありますか?
今回は、日本語学習のための「多読」を行うのに便利なウェブサイトを紹介します。
どれも多くの読み物が無料で公開されており、子どもや初心者も気軽に楽しめるようになっています。
ぜひ日本語学習教材としての活用を、学習者に勧めてみてください。
今回紹介するウェブサイトは「(学習者が)無料で多読ができるウェブサイト」です。
日本語教師等による授業での使用や商用利用の可否、教材の改変の可否等は、各ウェブサイトの規約に従ってください。
✔️多読がどんな勉強法なのか知りたい!
✔️多読の効果やメリットについて知りたい!
✔️日本語の多読ができる便利なウェブサイトが知りたい!
✔️おススメの多読教材が知りたい!
0. 日本語における多読とは?そのやり方や効果は?
多読とは、その名の通り「たくさん(本を)読むこと(による学習方法)」で、すでに英語等、様々な言語の学習方法の1つとして定着しています。
日本語学習における多読の目的は、大量のインプットを行うことで日本語に対する抵抗感をなくし、日本語との接触を習慣化することです。
また、継続して多読を行い、絵や写真などと共に繰り返し言葉に触れることで、母語に置き換えずに理解できる日本語の単語の数が徐々に増えていきます。いわゆる「日本語脳」ができてくるというわけです。
また、その結果として、文を読むスピードも上がっていくと言われています。
多読は、基本的に以下のルールを守りながら行います。
(1)簡単で文字数の少ない本(学習者が大体の内容を理解できる本)から始める
(2)分からなくても辞書を引かない
(3)分からない部分は、飛ばして読む
(4)読むのが辛くなったら別の本を読む
多読のやり方はこれだけです。
ただ、通常の読書や、日本語の授業でよく行われる「精読」とは大きく異なることが分かると思います。
このルールに則りながら、興味のある本をどんどん読み進めていきます。
多読のメリットとして、代表的なものをいくつか挙げておきます。
(1)単語や文法をピックアップして勉強したり、覚えたりする必要がない
(2)つまらないものや興味がないものに触れる必要がない
(3)学習者が飽きにくく、継続学習が行いやすい
(4)辞書を引かないので、読書のリズムが崩れない
「え… こんなの勉強じゃないじゃん」と思った人もいるかもしれませんが、多読の最も重要なコツは、「学習者が楽しめるものを、無理のない範囲で継続すること」です。
教師がテーマや教科書を選定し、それを読んでもらう(読ませる)精読や読解の授業との最大の違いは、そこにあります。
多読の効果としては、以下のようなものが挙げられます。
(1)読解力の向上
(2)語彙力の向上
(3)日本語をそのまま理解する力の向上(日本語脳)
(4)聴解力の向上
(5)勉強が楽しくなり、モチベーションが維持できる(or上がる)
「勉強」らしい勉強方法ではないのに、楽しみながら日本語が身につき、多くのメリットや効果があるのが多読の素晴らしいところです。
多読という学習方法や、授業で扱う際のコツ等についてもっと詳しく知りたいという方には、こちらの本がおススメです。
多読を活用した授業の進め方、教師の役割、多読での成功体験などが学べます。
なお、多読の本のレベル分けは、↑の本の監修も行っている「NPO日本語多読」の基準に準拠しているものが多くなっています。
以下にそのレベル分けを簡単にまとめておきます。
L0… 入門レベル。ほぼ絵だけでストーリーが理解できる。語彙数350、文字数0‐400
L1… 初級前半、JLPTN5レベル。語彙数350、文字数400‐1500
L2… 初級後半、JLPTN4レベル。語彙数500、文字数1500‐3000
L3… 初中級、JLPTN3レベル。語彙数800、文字数2500‐6000
L4… 中級、JLPTN3‐N2レベル。語彙数1300、文字数5000‐15000
L5… 中上級、JLPTN2‐N1レベル。語彙数2000、文字数8000‐25000
それではここから、無料で多読ができる便利なウェブサイトを紹介していきます。
1. にほんごたどく
無料で読める教材数… ★★★
教材の扱いやすさ… ★★★
上で紹介した「レベル分けの目安」を提供しているNPO多言語多読が運営しているウェブサイトです。
このサイトは特にレベル0(ほぼ絵だけでストーリーが理解でき、1話の文字数は400字以内)の無料教材がかなり豊富です。無料で始めるには十分すぎるほどの教材が揃っています。
昔話や短い物語もあれば、写真を使って日本の文化や生活を紹介する本も、クイズ形式で楽しく知識が身につくものもあります。
このサイトでは、「本をさがす」→「無料の読みもの」から、無料で読める多読教材をレベル別に探すことができます。
教材はウェブ上でそのまま読むこともできるし、PDFでダウンロードすることも可能です。
また、朗読音源がついているものもあるので、聞きながら読むこともできます。
日本語の授業等で多読教材として利用する場合は、商用目的でも利用可能です。
(これは日本語教師にとっても大きなメリットですね)
ただし、改変しての再配布や、公開されている教材を基に解説やテストなどを作成して使用することは禁止です。
読み物以外にも、多読のやり方やコツの分かりやすい解説や、実際の授業風景を紹介した動画も掲載されていて、教師にも優しいサイトになっています。
このサイトは英語にも対応しています。
2. たどくツリーハウス
無料で読める教材数… ★★★
教材の扱いやすさ… ★★
アメリカのスミス大学の日本語学科で企画された、多読向けの本を作成するプロジェクトから生まれたサイトです。
このサイトの最大の特徴は、同大学で日本語を勉強している学生さんたちが書いた「レベル別 多読向けのストーリー」が中心教材として扱われていることです。
絵や写真も学習者が自ら用意したものなどが多く使われていて、レベル0~2の教材の量がかなり揃っています。
トップページ下部の「SELECT A LEVEL」から、レベル別の教材一覧が見られます。
レベルは既出のNPO多言語多読の基準に準拠しています。
このサイトの教材は、PDFでのダウンロードはできませんが、ウェブ上でそのまま本として読むことができます。
なお、このサイトは英語に対応しています(というか基本英語です)。
3. KCよむよむ
無料で読める教材数… ★★
教材の扱いやすさ… ★★
JF(国際交流基金)の関西国際センターが運営しているサイトです。
教材のレベルはやや高めで、同基金編著の日本語教材「まるごと 日本の言葉と文化」のA1レベルの学習が終わった段階からの対応になっています。
面白いのは、関西国際センターが教材を作成していることもあって、大阪ならではの場所や施設を題材にした教材が多いことです。
関西に住んでいる学習者にはうってつけの教材が揃っていると言えるでしょう。
トップページをスクロールしていくと、レベル毎の教材が一覧で確認できます。
教材数はそこまで多くありませんが、こちらもPDFでのダウンロード、朗読音源のダウンロードに対応しています。
4. 多読 日本語学習読本
無料で読める教材数… ★★
教材の扱いやすさ… ★★
このサイトでは、子ども向けの多読教材を読むことができます。
内容としては、昔話が中心で、それ以外にも写真を豊富に使った動物や食べ物などの話があります。
レベル分けは前述のNPO多言語多読のものが採用されています。レベル0~1の教材が多くあります。
「レベル別読み物」のところから、レベル別に教材一覧を見ることができます。
こちらのサイトの教材もPDFでのダウンロードが可能ですが、音声は今のところ用意されていないようです。
5. 読みものいっぱい
無料で読める教材数… ★★★
教材の扱いやすさ… ★★★
日本語教育や言語学などを専門としている方々が、有志で立ち上げたウェブサイトです。
このサイトは教材の数が多く、初級~中級レベルの教材がバランス良く集められています。
何話か続くシリーズものがあったり、外国の文化や料理を紹介するような教材があったりして、ユニークな内容の本が目立ちます。
トップページをスクロールすると、そのまま教材一覧を見ることができます。
教材はPDFでダウンロードでき、一部の本は朗読音源も利用可能です。
このサイトは英語にも対応しています。
6. 多読におススメの本は?
ここまで、ウェブ上で無料で多読が体験できるサイトを紹介しました。
ただ、
「やっぱり紙の本を使って授業がしたい」
「PCやスマホがない環境でも使えるものがいい」
という人もいると思います。
そのような方に向けて、オススメの多読教材を紹介しておきます。
(1)レベル別 日本語多読ライブラリー にほんごよむよむ文庫
恐らく日本語の多読教材では最も多く扱われているシリーズです。
「スタート」からレベル0、…レベル4まで6つのレベルがあります。
この本は、複数冊で1セットになっています(この「スタート(超入門)」は8冊セット)。
なお、1セットの冊数はレベルやVolumeによって異なるので、説明欄をしっかり読んでからの購入をお勧めします。
1冊が1話で完結するので、外出時にも持ち出しやすいし、昔話や小説などを中心に、イラストを交えながら書かれているので、子どもも興味を持って読んでくれます。
2022年以降にリリースされている新版は、音声がMP3形式でダウンロードできます。
2006年~2009年あたりにリリースされているものは、CDが付属しています。
大量のシリーズ本が出ているので、この本を揃えれば、教材不足に困ることはほとんどないと思います。上のリンクから、レベルに合ったものを探してみてください。
(2)にほんご多読ブックス
こちらもNPO多言語多読監修のシリーズです。
昔話や童話などが中心ですが、屋久島や宮島、奈良の大仏の紹介などの読み物もあります。
(1)の日本語多読ライブラリーと同様、4~7冊程度がセットになっています。
ただし、こちらは、複数のレベルが同梱されたセットがあったり、音声はすべてMP3でダウンロードできたりします。
この本もかなりの量のシリーズ本が出ています。
ニーズに合ったものを選びましょう。
(3)初級日本語よみもの げんき多読ブックス
初級の日本語学習によく使われる「初級日本語げんき」に準拠した多読シリーズです。
同テキストの各課の学習が終わった人を想定した語彙や文法表現を使って書かれているので、本冊の方の進度に合わせて多読を進めていくことができます。
各セットが、10~12冊とボリュームたっぷりなのも魅力です。
(4)どんどん読める! 日本語ショートストーリーズ
こちらはN3程度の学習者向けと、ややレベルが高めです。
ただ、世界で愛されている「泣ける話」や「感動する話」を、N3までの語彙や文法を使ってリライトしたというユニークな本で、わりと読みやすくなっています。
また、一部の難しい単語や文法表現には対訳もついているので、読書のリズムが崩れるのを防いでくれます。
Vol.1~3までありますが、どれも1冊に20のストーリーが収録されていて、ボリュームたっぷりです。
まとめ
いかがでしたか。
多読は学習者が主体となり、楽しみながら学習(というか読書)を進めていく言語習得の方法です。
「楽しいかどうか」は継続学習のモチベーションに大きく影響します。
もし日本語学習に対するモチベーションが続かず悩んでいる外国人や日本語教師の人がいたら、この記事で紹介した多読ができるウェブサイトを、おススメしてみてください。
明日からの「学習」が少し変わるかもしれません。
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